弱体な日本の予備自衛官制度

 これらのデータから判断すれば、日本の兵員比率は世界平均の約3分の1に過ぎず、また南北朝鮮、中台など日本周辺国の世界的に見ても極めて高密度の兵力規模と比較しても、危険なほど兵力密度も兵員数も過少なことが明らかである。

「安保三文書」が、中期的に自衛隊員の総数を据え置くとしている判断の根拠としている日本の少子高齢化は、世界平均の兵員比率からみれば、本質的理由とは言えない。

 人がいないのではなく、世界各国が行っている平均的な国を挙げた国防努力を怠っているため人が集まらないということが、自衛官の募集難、人員確保の困難の根本的原因である。

 まず国民の国防意識が世界一低いことが挙げられる。

「世界価値観調査」(2017年から2020年)の結果によれば、日本人の「もし戦争が起こったら国のために戦うか」との質問に対する「はい」という回答の比率が、79か国中、世界最低の13.2%に過ぎなかったことでも明らかである。

 2番目に低いリトアニアでも32.8%あり、世界的には約4分の3の国は、5割を超え、6割から7割の国が大半である。

 近隣国の中国は88.6%、台湾は76.9%、ロシアは68.2%、韓国は68.4%に達している。米国は59.6%である。

 また、日本の場合は「分からない」との回答も世界一多く、38.1%に達している。

「分からない」ということは、国防や安全保障、愛国心についての教育や国際情勢、特に日本周辺情勢の実態について日本国民の多くが教育を受けていないか、実態を知らされず判断能力を欠くか判断の根拠を見失っていることを示している。

 このデータから、日本国民全体に対する国防意識と愛国心の啓発が初等教育段階から必要なことが明白である。

 また、高等教育・研究機関でも国際情勢教育、軍事教育がなされていないことの影響が如実に表れている。

 教育のみならず、日々国内外情勢について報道しているメディアの責任も大きい。占領下のプレスコード等に端を発する、メディアの反国家、反体制、反軍という偏向は今も継承されている。

 国民一般の国防意識の欠落という問題とは別に、兵員比率が世界平均より3分の1も低く、約1億2500万人の人口規模がありながら、わずか4万8000人前後の予備自衛官すら募集難で、充足率が7割程度にとどまっているのは、国として真摯な世界平均並みの国防努力特に兵員の徴募に対する真摯な取り組みを怠っていることの証左でもある。

 少子高齢化は、怠慢の口実に過ぎない。

 世界的には徴兵制の国も多く、兵員比率が高くなるのは当然かもしれない。また英独などの兵員比率は日本よりわずかに多い程度で、日本と大差はない。

 しかし、日本の場合は、周辺国の兵員比率が南北朝鮮、台湾など7%を超える国が集中している。中国も民兵を含めると、日本の約2.5倍の比率になる。しかも中国は世界一の約14億人の人口を擁している。

 日本を取り巻く軍事力バランスの特殊性を考慮すれば、日本の兵員比率の低さは、軍事的なバランス・オブ・パワーという観点からみて、侵略を誘発しかねないほど周辺国と比べて異様に低い。

 日本は国を挙げた自衛官徴募への真摯な努力をしなければ、装備はあっても使いこなせる人員がいない、損耗が生じても補充員がいない、部隊転用後の地域や駐屯地・基地の警備をする人員もいない、重要施設の警護もできないということになるであろう。

 予備役制度の拡充、予備自衛官の大幅増員を伴わなければ、「安保三文書」に述べられた防衛任務は完遂できない。予備役制度拡充は、啓発教育と国家施策により可能である。