日本の新リーダーを決める自民党総裁選が、きょう告示される。立候補者の乱立というのが今回の総裁選の特徴の一つだが、多彩な顔ぶれの中で、防衛相経験者の存在も目立っている。石破茂、林芳正、河野太郎の3氏だ。一方、刷新感から期待が高まる小泉進次郎氏は、内閣における外交・防衛経験の乏しさが指摘される。新リーダーは国防をどう司るべきか。安倍政権下で4年半の長きにわたって自衛隊制服組トップ・統合幕僚長を務めた河野克俊氏が、総裁選レースのスタートに合わせて提言する。
(河野克俊:元統合幕僚長)
核保有国ににらまれる日本
8月14日に岸田首相が総裁選不出馬を表明したことにより、9月27日の自民党総裁選挙の結果、新首相が誕生することになった。実質的にほとんどの派閥が解消されたこともあり、近年まれに見る候補が乱立する総裁選挙になった。現時点では次期総裁に誰がなるかについては予断をもって語る段階ではない。
したがって新首相の安全保障政策がどのような方向に向くかを語ることは現時点では困難であるため、安全保障の観点から次期首相に期待され、求められる資質・条件について述べることとする。
まず世界の安全保障環境を概観してみたい。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵略戦争はいまだ継続中であり、ウクライナがロシアへの越境攻撃を試みたが、戦況は一進一退の状況であり長期戦の様相を呈し出している。
2023年10月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃に端を発した中東における戦闘は、イラン及び親イラン勢力を巻き込み終結の目途がいまだ立っていない。
目を我が国周辺地域に向ければ台湾海峡を巡る情勢は予断を許さず、中国による武力併合に対する警戒を緩める状況にはない。
北朝鮮については核、ミサイル問題はもちろんであるが、今後の金体制の動向についても注視する必要がある。とりわけ核の問題については、残念ながら北朝鮮が核を放棄する可能性は極めて低いと見るべきだ。
その結果、日本は中国、ロシアそして北朝鮮という核を保有し、しかも独裁的リーダーが率いる専制主義的国家に囲まれている状況であり、その意味で、世界で最も厳しい戦略環境にあると言える。
それを踏まえた上で新首相に求められる資質・条件とは何か。