「相手を刺激しない」姿勢が相手を増長させてきた
まず、我が国を守る自衛隊の最高指揮官であるとの自覚を持つことである。当たり前のことではあるが、過去の首相の中には「自衛隊の最高指揮官になりましたね」と問われ「いや、そんなことはありませんよ」と答え、また「よく法令を調べてみたら首相は自衛隊の最高指揮官だったことが分かった」という首相もいたのである。
次に、必要な時には対外的に毅然とした態度が取れるリーダーであることだ。従来、日本政府の対応は相手を刺激しないということを基本にすえてきたように思う。しかし、その結果は、総じて相手の行動をさらにエスカレートさせることに繋がっている。
我が国周辺は、台湾海峡や北朝鮮の問題など潜在的な脅威が存在しており、一段と不安定な状況になっている。そうした厳しい安全保障環境の中で、必要な時に強い信念を持って毅然とした対応がとれるリーダーこそ今の日本には必要とされている。
第3は、自衛隊に対するシビリアン・コントロールすなわち文民統制を正しく理解し、それを実践できるということである。
戦前の軍による過度な政治介入の教訓を踏まえ、戦後誕生した自衛隊に対してはシビリアン・コントロールが徹底されてきた。
しかし、戦前のような軍の独走を繰り返さないという点に傾斜しすぎ、シビリアン・コントロールを政治から自衛隊を極力遠ざけるとする解釈が長く主流を占めてきた。
その結果、多くの政治家が軍事に関心を持たなくなり、シビリアン・コントロールは本来政治家による文民統制であるはずが、官僚による文官統制がシビリアン・コントロールであるとする解釈を生むことになった。
本来のシビリアン・コントロールを実践するためには、当然政治と自衛隊との距離が近くなければならない。そうすれば首相は自衛隊の最高指揮官である自覚も必然的に出てくるはずである。
政治が責任を持って自衛隊をコントロールする時代になったとの認識を新たなリーダーは持つべきだ。