増える高齢ドライバー、85歳以上は10年で約2倍に

 高齢者による事故を減らすには、運動機能や認知機能の衰えを感じた段階でハンドルを握らないに尽きるでしょう。それを実行するには、運転免許証の自主返納が最も確実と言えます。

 警察庁の運転免許統計によると、2023年の運転免許保有者は8186万人に達しています。1997年に7000万人台を突破し、2008年には8000万人台に到達しました。その後は多少の増減を示しながら8000万人台で推移しています。

 そのなかで際立っているのが、運転免許を保有する高齢者の急増です。65歳以上の運転免許保有者数は年々増加を続けており、2023年は1984万人で、全体の24%に達しました。実にドライバーの4人に1人が高齢者なのです。10年前の2013年と比べると、65 歳以上は1.3倍、70歳以上は1.5倍。75歳以上は1.7倍、80歳以上は1.8倍、85歳以上はおよそ2倍という増え方です。

図:フロントラインプレス作成
拡大画像表示

 では、運転免許証の自主返納はどのように推移しているでしょうか。警察庁の公表資料によると、2023年の自主返納は38万2957件で、前年から6万5519件も減りました。しかも減少は4年連続です。

 池袋の暴走事故が起きた2019年には過去最高の60万1022件の返納がありましたが、その後はコロナ禍の影響などもあり、減少に歯止めがかかっていません。その2019年と比べると、75歳未満の返納は25万594件から12万1388件へと半減。75歳以上の返納は35万428件から26万1569件へと4分の1も減りました。

 高齢者の運転による悲惨な事故がこれだけ多発しているにもかかわらず、自主返納のペースは鈍化が際立っているのです。そうした結果、運転技能や認知機能に衰えが目立ち始める75歳以上の免許保有者は、2023年末時点で728万2757人に達しました。

 池袋暴走事故のあと、道路交通法が改正され、70歳以上の免許更新時には「高齢者講習」、75歳以上には「認知機能検査」が義務付けられました。一定の違反歴がある75歳以上については、実際に運転技能を確かめる「実車試験」も課せられます。しかし、こうした対策で十分かどうか、常に議論の的になっているのも事実です。