「年末調整を廃止し、すべての国民が確定申告を行う」。自民党の総裁選で、デジタル大臣の河野太郎氏がこうした政策を打ち出し、賛否両論が飛び交っています。そもそも年末調整とは、どのような仕組みで成り立っているのでしょうか。仮に年末調整を廃止すると、どんな事態が起こり得るのでしょうか。サラリーマンの懐具合に大きく影響する年末調整とは? この制度の歴史も踏まえながら、「年末調整」をやさしく解説します。
河野太郎氏の主張の中身は?
河野氏は2024年9月3日、SNSのXに投稿し、年末調整廃止に関する自身の考えを明らかにしています。
それによると、現在は国税庁や市町村、日本年金機構などがバラバラに保有している国民の所得関連データを窓口機関で一元管理。同時に窓口機関はマイナンバーカードを使って、個人の所得や保険料、所得税、地方税などを名寄せしてマイポータルに表示させます。そのシステムを使えば、e-Tax(国税電子申告・納税システム)による確定申告も容易になるとの見通しを示しました。
年末調整の廃止は、この新システムの稼働が前提になっています。
河野氏はXでの同じ投稿のなかで「移行期間を経たうえで年末調整を廃止して、すべての国民に確定申告をしてもらう」と表明。さらに9月14日に行われた総裁選候補者の公開討論会では次のように述べました。
「いま政府には所得情報をリアルタイムに取るすべがない。デジタルセーフティーネットを築いて政府が本当に困っている人をみつけてプッシュ型で支援が出せるようにする。その副次的な効果で所得のデジタルデータ、保険料、源泉徴収のデジタルデータが集まってくれば、e-Taxでボタンを押すだけで確定申告ができるようになる。そうすれば年末調整もいらなくなる」
国民ひとりひとりに割り当てられたマイナンバーを使って、個人の所得情報を政府が完全に把握し、それに基づいて適正な徴税を行ったり、必要な支援を行ったりする――。それが河野氏の発想のようです。
河野氏のこの公約に対し、総裁選に出馬している他の候補者はどうでしょうか。前経済安保担当大臣の小林鷹之氏はXへの投稿で、「より煩雑な事務負担を多くの国民に強いる」と指摘。特にITリテラシーの低い層には過度の負荷がかかると反論しました。一方、ネット上では賛同する声も上がった半面、「政治資金の適正化が先だろう」といった反発も溢れています。
では、年末調整とは、そもそもどういうシステムなのでしょうか。