文=松原孝臣 撮影=積紫乃

スピードを培うことができた要因

 昨シーズン、初めて世界選手権に出場するなど飛躍の1年を過ごし、課題を見出しつつそれも含め収穫を得たフィギュアスケーター三浦佳生。その持ち味として、スピードがあげられる。

「もともとスピードを出してジャンプを跳びたいタイプで、それが小さい頃からあって、何も考えなくてもスピードが出るようになりました。最初はたくさん力を使ってこいで、こいで、とやらないとスピードが出なかったんですけど、だんだんエッジの乗る位置とか、効率のいいスケートの仕方とか、そういうものを意識しだしてからやっと楽にスピードを出すというやり方も身につけてきました」

 スピードを培うことができた要因には小学3年生から中学1年まで都築章一郎コーチの指導を受けたことにもあるという。

 練習の特色の1つに早朝のランニングがあった。

「練習前、めちゃめちゃ走ってましたよ。朝4時に集まって、リンクの横にある公園を50周、多いときは100周、走りました」

 その公園は都心部に見受けられる狭いものではなく、ジョギングに活用できるような大きな公園だ。

「(青木)祐奈ちゃんも同じ時代の仲間の一人ですけど、誰に聞いてもみんな『しんどい』って口を合わせて言うと思います。でも楽しかったですよ。都築先生に教わった時代があったからこそ、ジャンプの前でもスピードを落とさずに突っ込んでいくこともできますし、じゃなかったらここまでスピードも出せてないし、チャレンジ精神もここまでなかったかなと思います」

 スピードという武器を軸としつつ、心に抱いてきた方向性がある。

「もともと自分はフィギュアスケートを見るのが好きで、特に2010年代のフィギュアスケートが好きです。その頃のスケートは1人1人、スケートの技術や個性が光っていた印象があって、自分もそういうスケートがしたいと小さい頃から意識するようになりました。自分はスピードを出すというところに個性があるので、それをよりいかしていくための表現の仕方だったり、スケートの技術のあり方に意識を置いています」

 だから、近年出演する機会が増えているアイスショーは貴重な時間になる。

「今回(8月30日~9月1日)の『フレンズオンアイス』などのショーでは、アプローチだったり滑りが上手なスケーターさんばかりなので、ほんとうに見て学べるいい機会です。どの選手を見てもクロス一歩で全然力を使っていないように見えるけれど実はスケートはかなり滑っている。そういった効率のいいスケートをされているので、どうやったらできるかというのを見て学んで、かつ、上半身の使い方とか体の使い方にも意識を置いている方たちばかりなので、そういったところも見て学んでいます」

2024年8月29日、「フレンズオンアイス」で演技する三浦佳生 写真=長田洋平/アフロスポーツ