文=松原孝臣 撮影=積紫乃
選手にベストで滑ってもらいたい
株式会社パティネレジャーのスタッフとしてリンクの設営や管理に打ち込む髙橋二男(ふたお)。その根本は、何よりも「選手のため」、限りなく最高の状態に仕上げて維持することにほかならない。
「やっぱり選手にベストで滑ってもらいたいと思ってますのでね。できるかぎりよい氷を作ってあげたいなという気持ちはいつも持っています」
氷の状態についてやりとりすることもある。
「選手の方から氷の状態を聞かれることもありますし、私たちから『今日はどうだった?』と聞くこともあります。今日はよい氷なんじゃないかな、と思うときはありますし、『今日はよかったですよ』と選手の人が言ってくれるときもあります」
長年、従事する中では当然、選手と顔見知りになっていく。
「挨拶してくれる選手、挨拶してくれない選手、いろいろですが、気軽に話しかけてくれる選手は、やっぱり僕らにとっても気持ちがいいですよね。いい氷を作ろうという気持ちになります」
中でも、「リンクで話はよくします」 と髙橋が語るのは坂本花織だ。
2023年、さいたまスーパーアリーナで行われた世界選手権でも、公式練習の後、坂本が髙橋に話しかけている光景があった。
「とは言っても、あまり氷がどうとかそういう話はしないですね。あのときも試合の前ですから、緊張につながらないように柔らかい話をしていました」
もう1人、「律儀」と名前をあげたのは羽生結弦だった。
「羽生さんは必ず挨拶してくれますね。羽生さんは、やっぱり律儀ですよ」
羽生のアイスショー「RE_PRAY」もパティネレジャーが設営を手がけているが、ショーの終盤、羽生がマイクを手に観客席へ向けて話す中に、感謝を捧げる対象として「パティネレジャー」の名前もあった。それも羽生の性格を示していた。