ステージカー、バックフリップにも対応
アイスショーはシーズンを重ねて増えている。演出もさまざま取り組みがなされちる。
ときにはそこに神経を費やすこともある。「ファンタジー・オン・アイス」では人を乗せて氷上を動く「ステージカー」が使用された。
「ステージカーは1トンくらいあります。通ると、そこはやっぱり氷が割れますので、氷は硬めにしていました」
演出面ばかりではない。選手がどういうジャンプをやるのかによっても異なってくるため、それに応じて氷の厚さも慎重に考えるという。
「特に、バックフリップを跳ぶ場合は考えますね」
と語る。
「ただ、今の選手は上手に跳ぶので、そこまで深く穴は空かないです。以前は選手がバックフリップをやると、大きな穴が空きましたから、はらはらして見ていました」
選手が滑ればその分、氷には傷がつく。選手によって、傷のつき方も異なる。
「氷のダメージの大きい、小さいはあります。やっぱり羽生さんは上手なんでしょうね。そんなに深くつかないですから」
「来なくていい」って言われるまでやりたい
大会やショーが開幕するのに先駆けて現場に向かい、開幕まで準備し、終われば原状回復を図る。スケジュールが立て込んでいれば、そのまま次の会場へと向かう。だから「長期間、帰宅していない」という状況も生じる。
それでも髙橋は言う。
「体が言うことを聞いてくれている間は、『来なくていい』って言われるまでやりたいなと思っています」
60年を超えて打ち込んできた業務。そしてこれからも続けたいと思う。
その支えとなってるものは何か。
「やりがいというのは、競技会でしたら選手がいい成績を出してくれるというのがいちばんうれしいですし、アイスショーの場合には、選手がいい演技をして、お客さんが喜んでいる姿がうれしいですし、そこに尽きると思いますね。でも、いちばんは選手が転んで怪我するというのがいちばん嫌です。転べば、『穴につまづいたんじゃないか』『穴があったんじゃないか』と気になりますから、そうならないようにいつも心がけています」
言葉以上に、自身の仕事を語る表情が、髙橋の情熱を物語っていた。