見ている人が楽しんでもらえるような演技

 その先に見据える理想の演技についてこう語る。

「ざっくり言えば、見ている人が楽しんでもらえるような演技が目標です。フィギュアスケートは競技なので、どれだけ演技がよくてもジャンプがはまらないと見ている人の気持ちは変わらないので、そういった意味でもジャンプも必要になってきますし、いかに自分のスケートを見せながらジャンプを入れるか要素を入れるかというところにもっと意識を向けてやっていければ、徐々に理想に近づけていけると思います」

 男子は若い世代が台頭し、一方でキャリアを重ねてきた選手もいる。そんな現在の状況も、より自分らしさの追求に拍車をかける。

「今、面白い時代にはなってきていると思っています。例えば、イリヤ(・マリニン)みたいな4回転をたくさん入れてすごい点数を出す選手もいれば、ジェイソン・ブラウン選手みたいな表現やつなぎ、その中で完成度のあるジャンプをトータルパッケージで見せる選手もいる。いろいろな戦略があって見ていても面白いと思います」

 8月、来年行われるミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックで日本が使用する練習拠点を利用しての日本代表合宿に参加した。

「これといった感想はないんですけど、イタリアを直接訪問して、まだできていない選手村を見たりして、やっぱりオリンピックが近づいているなという気持ちにはなります。かといって、僕は意識すると駄目なのでなるべく意識はせず、ベストコンディションで行けるような練習をしていきます。1シーズン1シーズンを別物だと捉えて、まずは今シーズンを大切にしていきたいと思います」

 シーズンに携えるプログラムについてはこう語る。

「ショートプログラムは『Conquest of Spaces』という曲なんですけれど、振付師の方に言われたイメージで言えば、最初地球にいるんですけど地球にいることに飽き飽きした人が宇宙に冒険に出るというテーマです。難しいですけど解釈して腕のマイムであったり、そういったものもけっこう使っていてダイナミックであり、でも不思議な感覚になるプログラムなので見ている人も楽しめるんじゃないかな、と。

 フリーは『シェルブールの雨傘』です。映画で知っている方も多いと思うんですけど、自分も好きな映画で、その映画のストーリーだったり世界観というものを振付師のシェイリーン・ボーンさんとアイデアを出し合いながら作った、こだわりのあるプログラムです。ぜひ楽しみにしてもらえればなと思います」

 三浦と言えば、試合後などの取材での言葉が際立って個性的であることでも知られる。

「自分がしゃべりたいことをしゃべっているという感じで言葉が出てきていて、意識して作ろうとすると逆に出てこないと思います(笑)」

 自然体で飾らず、まっすぐにフィギュアスケートと向き合ってきた三浦佳生は自身の武器をさらなる個性へと磨き上げ、理想へ向かって進んでいく。