調査にあふれるドイツ企業の悲痛な声

 調査では高いエネルギーコストがもたらした結末はビジネス拠点としてのドイツにとって決定的(crucial)とされ、「今回の調査はビジネス拠点としてのドイツからの離脱トレンドを確認するものであった」とまで書かれている。

 ドイツ人が大好きだったはずの気候変動への配慮などエネルギー政策の「正の側面」については調査の自由記述欄に見られたものの、多数派ではないとの旨も言及があった。

 調査では企業の生の声として「ドイツの脱工業化(deindustrialisation)が始まっており、それに対して誰も策を講じていないように思える」といった悲痛な思いが紹介されている。

 そのほか「組織的に可能であれば、生産拠点の(一部)海外移転も実施する」という実際の声も紹介されている。まさに理想に絶望し、現実に覚醒するドイツ企業の様子が透ける。

 ちなみに、現在のドイツ経済・社会の苦境は脱原発に着手し、ロシア・中国依存を進めてきたメルケル政権の「負の遺産」という評価が目立つ。

 しかし、16年間続いたメルケル政権のうち12年間はショルツ首相の所属する社会民主党(SPD)が連立相手として参加していた。何より2023年4月15日、国内のエネルギー環境が最悪と言われる最中でわざわざ脱原発に踏み切ったのはショルツ政権である。

 脱原発を完了するタイミングで行われた世論調査では52%が脱原発方針に反対していたのだから(同年4月9日付の独紙ビルト)、現在の苦境に対しショルツ政権の責任がないとは言えない。