日本の産業空洞化で企業が味わった苦しみ

 輸出大国が産業空洞化を経て停滞に至るという現象から思い返される例は日本だ。

 周知の通り、日本は金融危機後の超円高に喘いでいる最中に東日本大震災が発生し、2011年当時の日本企業は六重苦と直面しているとの論評が注目されていた。具体的には①円高、②経済連携協定の遅れ、③法人税率の高さ、④労働市場の硬直性、⑤環境規制、⑥電力不足・電力コスト高である。

 過去の本欄や拙著で繰り返し論じている点だが、日本企業が対外直接投資を加速させ、日本の貿易収支赤字が定着したのがちょうど2011~12年頃だ(そして2013年以降、日本はヒステリックな円高局面を経験しなくなっている)。

 経済を含めて日本が最も沈痛なムードにあった2011年中頃、帝国データバンクは「産業空洞化に対する企業の意識調査」を行っているが、この際、上位3つの回答が「円高」「人件費の高さ」「電力などエネルギーの供給問題」であった。通貨高への懸念が特に大きく、これに人件費と電力コストが続いていた(図表③)。

【図表③】


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 恐らく、上記3つの回答は産業空洞化に関する企業意識として日本企業でもドイツ企業でも大差ないだろう。