クルスク州より被害の大きいベルゴロド州
ロシアのクルスク州にウクライナ軍が電撃侵攻したことが大きな注目を浴び、その作戦の結末に世界が注目している。
クルスク州では依然として住民の避難が続いている。しかし、より長期間にわたりウクライナ軍からの攻撃を受けてきたのは、隣のベルゴロド州の方だ。
ベルゴロド州ではこれまで民間人200人以上が死亡している。2023年5月には非正規軍の武装集団がウクライナ側から侵入。12月30日には州都ベルゴロド市への大規模砲撃で、市民25人が死亡した。
そして今年に入ってからは、文字通り毎日、砲弾やドローンによる被害が出ている。
とはいえ、ベルゴロド州の知名度は今回のクルスク州に比べて低かった。毎日少しずつの犠牲は、一度に多数の犠牲が出る場合と比べてニュースになりにくい。
それに、日本のメディアのロジックでは「ロシアが攻撃を受けても、ロシアが始めた戦争だから仕方ない。民間人が犠牲になっても、ウクライナ侵攻を続けるプーチンを支持しているのが悪い。自業自得だ」となるため、得られる情報に限りがある。
そこで本稿では、国境の町で何が起こっているのか、実際に見聞きしたことのみを時系列でお伝えする。
筆者はウクライナ軍がクルスク州に侵攻する直前のタイミングで、ベルゴロド州を訪れた。以前にも訪問したことがあるので、それなりに土地勘はある。
まずはベルゴロド市から、ウクライナ国境までわずか5キロの町、シェべキノ市へ向かう。
最初は市バスに乗るつもりだったが、バスがドローン攻撃を受けたため、運行を停止していた。そこで知人の車に乗せてもらうことにした。
出発早々ミサイル警告のサイレンが鳴り、一時停止して避難した。
サイレンが鳴りやみ、気を取り直して出発しようとしたところで、穴だらけの車を見つけた。
フロントガラスも割れている。乗っていたのは初老の夫婦で、シェべキノの住民だ。昨日のドローン攻撃で近くにあった車が大破・炎上し、夫婦の車もダメージを受けた。
妻は「とうとう、一時避難所の予約を取りました。でも町を明け渡すつもりはありません。人がいなくなればファシスト(ウクライナ軍)が来て占領されてしまう」と危機感をあらわにした。