経済的理由から避難できない住民

 そして隣の集合住宅も攻撃を受けていた。その前には軽トラが停まっており、家財道具が積まれている。

 男性は「もう3回も攻撃されて死者が出ている。これ以上、ここにはいられない」と話した。

 建物の正面に回ると、焼け焦げたバルコニーが痛々しい。もう誰も住んでいないかと思いきや、住まいの応急処置をしている初老の男性がいた。

 男性は窓を開けて身を乗り出し、小さな金槌で何かを叩いている。去る人、残る人、それぞれの人生が分かれた瞬間だ。

 シェべキノの中でも、さらにウクライナ国境に近い地点へと移動した。

 広い敷地が更地になっている。ここには集合住宅があったが、砲弾が直撃し再建不可能になったため、瓦礫が撤去された。

 この更地の横にも5階建て集合住宅があり、10家族ほどが残っている。

 住人の50代の男性に聞くと、避難しない理由は主に経済的な問題だ。頼れる親戚はおらず、集団生活を強いられる避難所には入りたくない。

 例えばモスクワ郊外などにマンションの一室を借りられるレベルの家賃補助があれば話は別だが、今のように実質、住民の自主性に任されている状態では身動きがとれないと言う。

住宅の残骸が片付けられ更地になった場所