51年振りの百条委員会

 だが、A氏の告発内容が「事実無根」ではなかったことが明らかになるにつれ、斎藤知事の旗色はどんどん悪くなっていった。県庁内部のヒアリング調査に関わった弁護士が、告発文書の中で知事との関係を指摘されていた県信用保証協会の顧問弁護士であることが報道で判明すると、調査の信ぴょう性自体にも疑いの目が向けられ始める。

 県議会の全会派から第三者機関設置を求める声が上がり、斎藤知事も第三者機関を設置して再調査することを正式表明した。ただ県議の中からは、証言の拒否やウソの証言、資料提出の拒否などをした場合に罰則が科せられる百条委員会の設置を求める声も高まっていた。

 すると知事側近の片山副知事が動く。6月7日、県議会の合間に自民党の大物県議に対して「突然ですが辞職しようと思います。だから、百条委だけは…」と懇願したのだ。片山は自身のクビと引き換えに百条委員会設置の議案を提出しないよう頼み込んだが、自民党の県議に拒否された。

 そして自民・ひょうご県民連合が共同提案した百条委員会の設置は6月13日に議会で可決された。採決では維新と公明が反対に回った。

 6月27日に開かれた百条委員会の2回目の会合では、内部通報をしたA氏の証人尋問は7月19日に行われることも決定されていた。

 また県職員労働組合は知事の退職を求める決議をして申し入れをすることが決まっていたが、そこに起きたのがA氏の自死である。

「都知事選があった7日夜になってA氏の姿が見られないと家族から捜索願が出されましたが、その後、姫路市内の実家で自死しているA氏が発見されました。勇気をもって内部通報をしてくれたのに自死を選んだということは無念でしかないと思います。家族や職場の方々がどのような対応をしていたのかはまだ分かりませんが、県の対応の拙さが起こした事件だと言い切ることはできると思います」(大手紙・社会部デスク)

 10日、県職員組合は知事に辞職を求める申入書を提出したが、同日の会見で斎藤知事は「生まれ変わって信頼関係を再構築したい」と辞職する意思はないと述べた。

 それでも「辞職」を求める声は止まない。7月12日には副知事の片山氏が7月末で辞任する意向を表明。会見では、斎藤知事に一緒に退職する考えはないかと伝えたが「県民の負託を受けており、任期を全うして頑張りたい」と言われたことも明かした。

 2日後の14日には、自民党兵庫県連の末松信介参議院議員が、「知事には大きな、正しい決断をしていただきたい」と辞任を求める発言を行った。