自民党は県知事選の際には維新とともに斎藤知事を推薦した関係だったが、知事就任後、維新との距離をどんどん縮めていく斎藤知事と自民党の関係は必ずしも良好ではなかった。

 さらに昨年4月の県議会議員選挙では、維新が大幅に躍進する一方、自民党は議席を大きく減らした。その結果、分裂していた会派が統合することとなった。自民党が会派を割ってまで推した斎藤知事は、いまやほとんど「維新の知事」。自民党はとうに愛想を尽かしていると言っても差し支えないだろう。それが末松氏による事実上の辞任勧告に繋がっている。

 一方で兵庫での政治的基盤を盤石にしたい維新にとって、ここで斎藤知事が辞任するようなことになれば甚大なダメージを被ることになる。なんとしてでも持ちこたえてもらいたいところだろうが、維新側のスタンスも変化してきているように見える。

維新との連携のアピールに積極的にだった斎藤元彦知事。昨年6月、甲子園球場で行われたプロ野球セ・パ交流戦の阪神-オリックス戦の始球式に、大阪府の吉村洋文知事(左)と並んで登場した(写真:共同通信社)
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 7月17日、大阪府の吉村知事は、斎藤知事の説明姿勢について「同じことを繰り返し答えていて官僚的だ」と指摘。百条委員会を待たずに事実関係や背景を積極的に説明するよう促した。もし維新が斎藤知事と距離を置き始めれば、県政はにっちもさっちもいかなくなるだろう。

最後の通話履歴

 ひとつ気になる情報がある。

 亡くなったA氏の7日の通話履歴の内容だ。長時間の通話履歴が残っており、その電話が終わってからA氏が自死したことも判明している。通話の相手はある県議だったという。

 A氏は遺書に「プライバシーに配慮してください」とメッセージを残している。

「電話はA氏が百条委員会で証人として喋ることを阻止しようとする者からだと思います。押収されたA氏のパソコンの中には明らかにされたくない私的な内容が含まれていたことから、それをネタにされて長電話となったという見方も出ています。それが『プライバシーに配慮してください』というメッセージに繋がっているのではないかとも考えられます」(民報テレビ・県政担当キャップ)

 パソコンの記録の中にどのようなプライバシーに関わる内容のものがあったのかは定かではない。ただ、そのことをネタに、A氏が7日の電話で脅されたのではないかという見方も一部ではなされている。

 A氏は亡くなる前に百条員会出席に向けて陳述書や音声データを準備していた。それらは遺族から議会側に提出された。19日の百条委員会では、これらを資料として採用するかどうかが諮られるという。

 A氏が自らの死をもって抗議した斎藤知事のパワハラ疑惑に関する真実追及、そこに自民党と維新の政治的駆け引きが重なり、兵庫県政は混迷を極めている。ただ県民は、幹部職員が死を選ばざるを得ない状況に相次いで追い込んだ斎藤県政のあり方に極めて厳しい視線を投げかけている。