「事実無根」ではなかった

 だが4月になると、斎藤知事側の対応に大きな疑義が生じることとなる。

 まず県の産業労働部の部長が、告発文書に記されていた贈答品の授受を認める。知事本人の疑惑ではないが、文書の内容が「事実無根」とは言い切れなくなってきた。

 さらに大きな事件があった。4月20日、告発文書の中で触れられていた阪神・オリックス優勝パレードの担当者だった県総務課長が自死したのだった。この事実は、当初公にはされていなかったが、県庁内では「総務課長が自殺したらしい」と噂になっていた。内部告発に書かれていた事案との関連についてまだハッキリとしたことは分かっていないが、優勝パレード担当の職務と課長の死との間に何らかの関係があったのではなかったのかとの見方も県庁内では根強い。

 それでも県はA氏への“攻撃”を続けた。内部で関係者にヒアリングした結果、A氏の内部告発の全てにおいて核心的な部分が事実でなく、誹謗中傷に当たるとして、5月7日、A氏に対し停職3カ月の懲戒処分を下す。そのうえで一部県議などから要望があった第三者委員会の設置も不必要と断じたのだ。

 ところが、である。丸尾牧県議が独自に県職員に実施したアンケートにより、知事のパワハラや県幹部の贈答品収受の実態が浮き彫りになった。「知事本人ではないが側近が視察した会社から贈答品などを貰っていた」「本人もカニなどを貰っている」などという回答のほかに、知事から強烈に怒鳴られたという職員らからの“証言”が出てきたのである。

 この時期の知事の対応次第では、状況がここまで悪化することはなかったかもしれない。前出のデスクが言う。

「素直に自分の非を認めて『申し訳ありませんでした。今後は問題に丁寧に向き合い改善していきたいと思います』などと釈明をすれば沈静化する可能性もありましたが、知事にはそのつもりはさらさらなく、A氏に処分を下すことで乗り切ろうとしていました」