イラン大統領選で6月28日の第1回投票で1位になったマスード・ペゼシュキアン氏の支援者(写真:ロイター/アフロ)
  • 7月5日、イラン大統領選の決選投票が実施される。6月28日の投票では改革派のマスード・ペゼシュキアン氏が1位となり、決選投票で保守派のサイード・ジャリリ氏と次期大統領の座を争う。
  • ペゼシュキアン氏が予想外に善戦したのは、経済低迷と締め付けに国民の不満が爆発寸前にあるからだ。
  • いずれの候補が勝利しても最高指導者ハメネイ氏は締め付けを強化すると見られ、ガス抜きのため対外的には強硬路線に転じる可能性がある。イスラエルと再び交戦状態に入る懸念もあり、イランの出方次第では中東が大混乱に陥り、原油価格が急騰する可能性もある。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)


 米WTI原油先物価格(原油価格)はこのところ、1バレル=82ドルから84ドル台の間で推移している。先週に比べて価格のレンジが2ドルほど上方に推移している。

「米国を中心に夏場に原油需要が拡大する」との期待と中東地域の地政学リスクの高まりが主な要因だ。

 イラン大統領選の状況を分析する前に、まずは、世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。

【関連記事】
イラン人が「親日」になった理由 なぜアメリカでもイギリスでも中国でもなく、日本人を意識するのか

イラン大統領を決めるのは誰?ライシ師事故死で選挙へ、「強硬派推し」最高指導者ハメネイ師の影響力に国民の反発も

相変わらず効果が乏しいOPECプラスの減産目標

 ロイターによれば、石油輸出国機構(OPEC)の6月の原油生産量は前月比7万バレル増の日量2670万バレルと2カ月連続で増加した。

 ナイジェリアは前月に比べて5万バレル増加した。イランの原油生産量は日量320万バレルと過去5年で最高水準となっている。

 一方、イラクの原油生産量は前月に比べて日量5万バレル減少したが、OPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成)の目標を依然として20万バレル超過している。

 加盟国の足並みが揃わないことから、OPECプラスの6月の原油生産量は目標を日量28万バレル上回っており、原油価格の下支え効果を十分に発揮できない状況が続いている。

 世界最大の産油国である米国の生産量は日量1320万バレルと好調だ。だが、夏場特有の波乱要因が頭をもたげている。