ヘリで墜落死したライシ大統領(写真:ロイター/アフロ)

イランのライシ大統領がヘリコプターの墜落事故で死亡しました。ライシ師は保守強硬派として知られ、最高指導者ハメネイ師後継の有力候補と目されていました。イランはイスラエル、米国と厳しく対峙し、イスラム組織ハマスなどの武装組織も支援してきました。ライシ師の後任を選ぶ大統領選は6月28日に実施されます。どのように選挙が行われ、外交・内政にどのような影響があるのでしょうか。フロントラインプレスがやさしく解説します。

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ライシ師、米国が開発した古いヘリで墜落死

 ライシ師やアブドラヒアン外相が乗り込んだヘリは5月19日午後、イラン北西部の東アゼルバイジャン州を飛行中に交信を絶ちました。1960年代に米国がカナダ軍向けに開発した古い機体でした。1979年のイスラム革命前にイランに導入され、米国との国交が絶えた後は自分たちで修理しながら使ってきたとみられます。

 事故当時、現場周辺には濃い霧が立ち込めていました。老朽化したヘリの操縦に何らかの「技術的な欠陥」(イラン国営テレビ)があったようです。

 人口8900万人のイランはイスラム教シーア派を国教とし、中東地域の政治や経済に強い影響力を持つ大国です。石油や天然ガスを産出する資源国でもあり、ミサイル製造が可能な技術力を誇ります。

 王族支配など専制的な国家が多い中東で、イランは民主的な選挙が尊重される国です。しかし選挙で選ばれる大統領の上には、絶対的な権力を持つ最高指導者ハメネイ師がいます。

イランの最高指導者ハメネイ師= 2024年5月10日撮影(写真:AP/アフロ)

 正規の国軍とは別に、治安維持を担う「イラン革命防衛隊」もハメネイ師の直属です。最高指導者の意向に沿わなければ、大統領とはいえ、政治のかじ取りは困難です。「政教一致の共和国」という環境下では、選挙の影響は限定されます。

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 ヘリコプター事故の後、ハメネイ師は憲法の規定に従い、第一副大統領のモフベル氏を大統領代行に任命しました。大統領選の投票日を6月28日に決定。候補者の登録は5月30日から始まります。