ハメネイ師は大統領選にどう関与?

 次期大統領選の候補者には、大統領代行のモフベル氏らの名前が挙がっています。

 第一副大統領を務めてきたモフベル氏は、ハメネイ師や革命防衛軍に近い保守強硬派とみられています。米紙ニューヨーク・タイムズによると、イランの副大統領は通常、公の場に出ることは少なく、モフベル氏が目立ったのも2022年10月にモスクワを訪れた時くらいだと言います。

 このとき、ウクライナとの戦争に使うイラン製の弾道ミサイルやドローンの売却契約を締結しました。核、ミサイル開発に融資する金融機関や、ハメネイ師と関係の深い財団に長く関与してきたと指摘されています。

 そのほかには、保守穏健派のラリジャニ元国会議長、過去に大統領選に出馬しているジャリリ元・最高安全保障委員会事務局長らの立候補も取りざたされています。

 またハメネイ師の次男、モジタバ師も最高指導者の潜在的な候補者だと言われています。英紙ガーディアンによると、モジタバ師はハメネイ師の代理人役を担い、イラン革命防衛隊「コッズ部隊」や防衛隊傘下の民兵組織「バシジ」との間に太いパイプを持っているとされています。

 大統領選の候補者は登録後、これまでと同様に「護憲評議会」の事前審査を受けます。ここで政権に批判的な候補が排除され、ハメネイ師と同じ強硬派の当選が確実になれば、投票率が一段と下がることが予想されます。

 2024年3月に行われた国会議員の選挙でも現体制を支持する保守派が圧勝しましたが、投票率は低く、41%にとどまりました。こちらも1979年のイスラム革命以降で最低。大統領選でも国会議員の選挙でも国民の半数以上が棄権する状況になっているのです。

 投票率が下がれば、政権の正統性が疑われることになりかねません。かといって、穏健派や改革派に立候補の道を許し、万が一当選した場合には、ハメネイ師との衝突は避けられません。

 ハメネイ師の年齢と健康状態を考えると、今回の大統領選こそがハメネイ後継を占う最大のポイントです。中東情勢が不安定なときだけに、イランの選択が重みを増しています。

フロントラインプレス
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