イランの大統領はどうやって決まる?

 死亡したライシ師は大統領に当選して以降、最高指導者ハメネイ師後継の有力候補でした。ハメネイ師は今年で85歳と高齢。英紙ガーディアンによると、前立腺がんの治療を受けたことがあり、ほかにも健康問題を抱えています。突然、ライシ師を失ったことは大きな誤算だったはずです。

 ライシ師は長年、司法畑を歩んだイスラム法学者(聖職者)でした。2017年に初めて大統領選に出馬し、穏健派の現職(当時)・ロウハニ師に敗れました。しかし2019年、ハメネイ師によって司法府のトップに任命され、再び脚光を浴びます。ほかにも重職を担い、2021年の大統領選では圧勝しました。

 しかし国民から十分な支持を集めていたとは言えません。

図:フロントラインプレス作成
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 イランではハメネイ師が任命した聖職者でつくる「護憲評議会」が候補者の事前審査を行いますが、2021年の大統領選では、その評議会でライシ師の有力な対抗馬が軒並み失格になったのです。

 実際の選挙では、ライシ師の得票率は61.9%。白票などの無効票が次点候補を上回っていました。投票率は過去最低の48.8%で、1979年のイスラム革命以降で最低という不名誉な結果でした。

 大統領に在職中の約3年間、ライシ師はパレスチナ自治区ガザのハマス、レバノンの民兵組織ヒズボラなどを後押ししてきました。いずれもイスラエルと敵対する組織です。

 そして2024年4月には初めてイスラエルへの直接攻撃に踏み切りました。イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」の司令官らがイスラエルによって殺害されたことへの報復として、大量の弾道ミサイルや自爆ドローンをイラン領土からイスラエルに撃ち込んだのです。