ふるさと納税では地方の特産品が大人気だ=写真はイメージ(写真:show999/Shutterstock)

 政府が「地方創生」に取り組み始めて、今年で10年になります。東京圏だけが栄える状況を変えるために、地方自治体に交付金を配分して都会からの移住促進や地域の魅力づくりを競わせるかたちでした。その1つが「ふるさと納税」です。世界的な通販業者・アマゾンもこのふるさと納税の仲介業者として参入の意向を示しているとされています。

 しかし、「外資を参入させれば地方が食いものにされるだけ」といった批判も出るなど、10年を経て地方創生の変質を懸念する声も少なくありません。アマゾンも関心を示すふるさと納税を軸に、地方創生の課題をやさしく解説します。

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「地方創生」が始まって10年

 地方創生に関する取り組みが始まった2014年、日本の将来像に関わる衝撃的なデータが公表されました。民間団体の日本創成会議が示した「消滅可能性都市」です。

 研究を取りまとめた増田寛也氏(元岩手県知事、元総務相)の名を取り、「増田レポート」と称されています。少子高齢化や首都圏への人口集中などにより、日本社会の姿が大きく変わると予測したレポートです。

 それによると、2010〜40年に20〜39歳の女性が半分以上減る自治体などを「消滅可能性都市」とし、全国896の市町村がそれに当てはまると指摘しました。その中には小さな町村だけでなく、旭川市や小樽市といった中堅都市、札幌市南区や東京都豊島区など大都市圏の自治体も含まれていました。

 増田レポートの衝撃は大きく、中央・地方の政界に加え、経済界や学会でも議論が百出します。

 そうした事情を背景に、当時の安倍晋三政権は抜本的な対策に乗り出しました。それが国家戦略の「まち・ひと・しごと創成」です。省庁横断で政策を総動員し、人口減少の克服と地方創生を同時に推進して活力ある日本社会を維持することを目標に掲げました。

 2014年には「まち・ひと・しごと創生法」も成立。内閣府に地方創生推進事務局を置き、地方創生担当大臣も置くなどして推進体制を整えました。

 この国家戦略は「地方において若者向けの雇用をつくる。2020年までの5年間で30万人分」「現状で年間10万人超の東京圏への人口流入に歯止めをかけ、東京圏と地方の人口の転出入を均衡させる」といった具体的な基本目標を打ち出しています。

 そして、それを具体化するための法改正や特区創設、税制改正などを矢継ぎ早に打ち出しました。その1つが「ふるさと納税」です。

 ふるさと納税自体は地方税法などの改正で2008年にスタートしていましたが、地方創生の方針に従って制度改革を図り、大きく発展していきます。