地方の衰退には歯止めがかからず
自治体を競わせ、魅力を発信して都会から人や企業を呼び込むという地方創生は、ふるさと納税に限っては返礼品の過剰な競争という側面も生み出しました。そのため、総務省は「自治体に商品券や家電などを返礼品にしないよう要請」(2016年)、「返礼品を寄付額の3割以下にするよう要請」(2017年)といった対策を求めてきました。
さらに、2019年には改正地方税法を成立させ、基準を満たす自治体のみが制度の対象になるように改革。経費を寄付金の5割以下に抑えることや仲介業者にポイント付与などのサービスが過剰にならないよう自主ルールの策定も要請しました。
つまり、仲介業者を巻き込んで進む返礼品の過剰な競争と、それを引き締めようという総務省が、いわばイタチごっこを続けていたのです。
アマゾンの参入は手数料水準の低減を推し進め、自治体にとって当面はプラスに働くかもしれません。すでに多くの人が利用しているアマゾンのサイトにふるさと納税が加われば、この制度の利用者が増え、市場を拡大する効果もありそうです。
ただ、アマゾンがどのような条件で自治体と取引するにしても、寄付金の半額近くが経費として消えていくふるさと納税の現状は、地方創生の趣旨に本当に合致していると言えるのでしょうか。
政府は今年6月、これまでの地方創生の検証結果を公表する予定です。総務省の2023年データを見る限り、東京圏への転入者数は転出を大きく上回る一方、人口が流出する「転出超過」は40道府県に上っています。
地方の衰退に歯止めは掛かっていないのです。自治体が知恵を絞って魅力ある地域を創出し、将来も安定的な地域社会を維持できるようにする――。アマゾン参入が伝えられるふるさと納税にしても、その他の施策にしても、地方創生に本当につながるのかどうか、関心を持って見守る必要がありそうです。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。