「ふるさと納税」は1兆円規模の「成長市場」に
総務省が2023年8月に公表した調査によると、初年度の2008年度に81億円だったふるさと納税の受け入れ総額は、その後もしばらく横ばいが続きます。
上向きになったのは、地方創生が始まった2014年度から。2018年度には5000億円を超え、2022年度には9654億円に達して1兆円の大台が目前になりました。同年度の件数は5184万件。日本国民の2人に1人が1回は利用した計算です。
ブームを生み出したのは、自治体が用意した「返礼品」の豊富さと、気軽に申し込める専用ポータルサイトの誕生です。
返礼品は各自治体の名産品が主流で、肉、魚介・海産物、果物・フルーツ惣菜・加工品で6割を超えているとされています。
ふるさと納税の受け入れ額(2022年度)が最も多かったのは、195億円の宮崎県都城市で、以下は、紋別市、根室市、白糠町と北海道の自治体が続きました。都城市は肉、紋別市などはホタテやカニで知られた地域です。
ふるさと納税の返礼品は専用ポータルサイトで自由に比較しながら選ぶことができます。各ポータルには各地の品々が派手な宣伝とともに並び、自治体のコンテストさながらです。
最近では、「地方の名産」という常識を打ち破るような返礼品も登場するようになりました。多目的防災シェルター(群馬県伊勢崎市、寄付金額3億円)や競走馬・引退後余生支援(高知県須崎市、1億5000万円)、鋼製の大鳥居(奈良県宇陀市、6000万円)、トレーラーハウス(静岡県沼津市、3000万円)などもラインアップに並んでいます。
一方、専用のポータルサイトも増えてきました。現在では20以上を数えます。「さとふる」「ふるなび」「ふるさとチョイス」といった老舗の専用サイトだけでなく、航空会社による「ANAのふるさと納税」「JALふるさと納税」も開設。ヤフー、マイナビ、楽天、au、セゾン、三越伊勢丹、ぐるなび、JRE(JR東日本系)といった名だたる企業も専用サイトをつくってポータル事業に参入しています。