強行姿勢を崩さないイスラエルのネタニヤフ首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
  • イスラエルによるイスラム組織ハマスからの人質救出作戦で、子供を含む多くのガザ住民が殺害された。パレスチナ側は274人が死亡したとし、「大虐殺」だと批判している。
  • 国連はこれに先立ち、イスラエルを子供の人権侵害でブラックリストに追加。イスラエル側は猛反発しており、人質救出も「優れた作戦だった」と自画自賛だ。
  • だが、ネタニヤフ政権ではガンツ前国防相が戦時内閣から離脱するなど、分断が顕在化している。イスラエルをめぐる情勢が危うさを増している。(JBpress)

(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

 6月8日、イスラエル国防軍(IDF)は昨秋イスラム組織ハマスにより人質とされた4人の救出作戦を強行した。4人は無事保護された。昨年10月以来、現在も100人以上が拉致されたままと見られ、その解放を訴えてきたイスラエル市民は、歓喜の声をあげた。

 4人の中にただ1人含まれていた女性は、ノア・アルガマニさん(26)だ。ノアさんは、ハマスの襲撃で364人が殺害された音楽フェスティバルに参加していた。拉致当日、ハマス戦闘員のものと見られるオートバイに乗せられ「殺さないで!」と懇願していた動画が広く拡散されていた。

救出されたノア・アルガマニさん(提供:Israeli Army/ロイター/アフロ)

 ノアさんは解放後、すぐに末期の脳腫瘍に侵されている母親の元を訪れた。母親は、ノアさんが人質に取られた昨秋、車椅子で「せめて娘を抱きしめたい」と訴えていた。ノアさんの父親は地元紙の取材に対し、症状の悪化した母親がノアさんとの面会中、反応が薄いながらも娘の解放を理解できているようだったと話した。

 解放当日は、ノアさんの父親の誕生日でもあった。8カ月に及ぶ人質生活を生き延びた娘と、無事解放を祈ってきた父親のささやかな誕生祝いの様子は、国内外で広く報じられた。

 人質解放を受けて、イスラエルのネタニヤフ首相は会見で、「優れた救出作戦だった」と自賛した。また、今後ハマスが全ての人質解放を行わない場合は「あらゆる手段を講じる」とも強弁している。

 一方のハマスはこの救出作戦中、他の人質が殺害されたとも主張している。