2024年5月24日、ICJ(国際司法裁判所)はイスラエルに対し、ガザ南部ラファに対する攻撃をただちにやめるよう命令した(写真:ロイター/アフロ)

パレスチナ自治区ガザへの攻撃を続けるイスラエルに対し、国際的な司法機関の動きが目立っています。国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官はイスラエルのネタニヤフ首相らに戦争犯罪の疑いで逮捕状を請求しました。国際司法裁判所(ICJ)はガザ南部ラファに対する攻撃中止を命令しました。こうした動きは混迷を深めるパレスチナ情勢にどう影響するのでしょうか。やさしく解説します。

西村卓也:フリーランス記者、フロントラインプレス

逮捕請求に続き攻撃停止命令

 ICCは文字通り裁判所ですが、被疑者に対する捜査や訴追を行う検察局を持っています。そのトップであるカーン主任検察官が5月20日、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相の逮捕状をICCに請求すると発表しました。同時にガザのイスラム組織ハマスの幹部3人に対しても逮捕状を請求するということです。

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 ICCによる訴追は加盟国や国連安全保障理事会が付託した場合と、検察局が職権で捜査をした場合に限られており、今回は後者のケースです。カーン主任検察官はネタニヤフ首相らについて、ガザ攻撃の生存者や目撃者らにインタビューした結果として、殺人や民間人の飢餓を戦争の手段として利用するなどの戦争犯罪、住民の絶滅を図るなどの人道に対する罪に問うべき十分な証拠があると訴えました。

 また、3人のハマス幹部に対しては、イスラエルに対する2023年10月7日の大規模攻撃における殺人や人質を取るなどの戦争犯罪、人道に対する罪への責任を問うとしています。

表:フロントラインプレス作成
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 その4日後の5月24日、今度は国連の一機関であるICJ(国際司法裁判所)がイスラエルに対し、ガザ地区南部のラファに対する攻撃をただちにやめるよう命令しました。南アフリカがラファ攻撃を防ぐよう暫定措置を申請したことを受けてICJが決定したのです。

 南アフリカは2023年12 月、イスラエルによるガザ攻撃はジェノサイド(集団虐殺)に当たるとしてICJに軍事作戦停止の暫定措置を求めました。ICJは2024年1月、イスラエルにジェノサイドを防止するためのあらゆる措置を講じるよう命令しています。ラファ攻撃停止命令はその延長線上にあります。