従わなければ国際的孤立

 紛争の司法的解決を図るために設置された国際裁判所。その最大の課題はいかに裁判所の決定を現実の紛争に反映させるかです。

 国際司法裁判所(ICJ)はイスラエルのラファ攻撃停止を命令しましたが、イスラエルは従おうとしません。国連憲章は、一方の当事者が判決による義務を履行しない場合、もう一方の当事者は安全保障理事会に訴えることができ、安保理は必要な措置をとることができるとしています。

 しかし、安保理常任理事国の米国はこれまで、イスラエルに不利な決議にことごとく拒否権を行使してきました。安保理を通してICJの命令をイスラエルに履行させることは期待薄です。ICJの決定には法的拘束力はあるのですが、十分な執行手段がないのです。

 一方、国際司法裁判所(ICC)は加盟国・地域の数が124カ国にとどまっています。特に米国、ロシア、中国などの大国が加盟していません。パレスチナは2015年に加盟していますが、イスラエルは加盟していません。したがって逮捕状が発行されても、当事者が非加盟国にいる限り逮捕する強制力がないのです。

 ただ、加盟国には協力義務があり、ICCからの逮捕や引き渡しの請求に応じなくてはなりません。したがってイスラエルのネタニヤフ首相やロシアのプーチン大統領はICC加盟国を訪問すれば逮捕される恐れがあるので、国外への行動が制約されることになるでしょう。