汎用力のある基礎学力を身につけたほうがいい理由

 確かに総合型選抜は個々の高校単位でも、全国的な傾向でも増えている。だが、筆者はより多くの科目について着実な学力をつけておいたほうが大学進学後、社会に出てからも本人にとって有効だろうと考えている。

 年内入試について、ある私学の校長と語り合ったことがあるが、その校長はこんな実態を明かしてくれた。

「難関大学の総合型選抜は学校のカリキュラムの一部を利用して突破できるものではありません。家庭環境から一般レベルを超えていないと難しいです。かといって、学校のカリキュラムでどうにかなる大学は、高1からそこを目指して勉強するほどの意味も感じません。

 社会やビジネスで不確実性が高く、未来の予測が難しいVUCAの時代だからこそ、汎用性のある基礎学力をきちんとつけておいたほうがいいと私は考えています」

 いま新聞を開くと「リスキリング(学び直し)」という用語が毎日のように登場しているが、こうした時代に巣立っていく学生たちなのだから、いろいろなことに関心を持つ好奇心や幅広い学力を有しておきたいところだ。

【安田理(やすだ・おさむ)】
安田教育研究所代表。東京都出身。大手出版社にて雑誌の編集長を務めた後、教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年に安田教育研究所を設立。教職員研修・講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。各種新聞・雑誌、ウエブサイトにコラムを連載中。