西側は結束を保てるか?
貿易の変化はすでに顕著だ。
戦後の時代を通してずっと、米国は1930年代の記憶と戦後の戦略的目標の双方に影響され、多国間主義と自由市場経済を推進してきた。
今では、これが重大な過ちだったという超党派の合意が強まっている。
バイデン政権は同盟国と比較的緊密であり続けることを望んでいるが、その政策も多少「米国第一」だ。
だが、トランプはバイデンよりも格段に臆面もないナショナリストだ。
プーチンは平和な欧州秩序にとっての明らかな敵だ。筆者の考えでは、そのプーチンを支持することにした中国の決断が決定的な分岐点だった。
だが、西側世界が中国との競争で自己を守ることを望めば望むほど、互いに結束している必要も強まる。
トランプや彼をまねる欧州の指導者のナショナリズムは、そうした協力をほぼ不可能にする。
我々の戦略的競争の時代においてさえ、特に気候問題について、中国との協力が欠かせない。
西側は発展途上国と新興国が抱く懸念に対して、もっと寛大に対応する必要もある。
だが、何よりもまず、自由民主主義国の共同体として生き残らなければならない。
これは道義的かつ実際的な必要性だ。もし権威主義的なナショナリズムがそれを破壊すれば、西側は戦いに敗れたことになる。
1939年に、詩人のW・H・オーデンは「卑しく、不誠実な10年」と断じたものについて書いた。2029年に我々の10年はどう見えるだろうか。
(文中敬称略)