(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年5月22日付)

色とりどりの花が咲き誇るザルツブルグのミラベル庭園(touchingbeyondによるPixabayからの画像)

 欧州に春のしるしが3つ訪れた。

 咲き乱れる花々、いつまでも明るい夕方、そしてどこからともなく聞こえてくる米国人同士の会話だ。

 いずれも歓迎だ。

 ただ最後のざわめきは、米国人旅行者の購買力を思い出させてくれる年中行事でもある。

 米国が過去10~20年に欧州大陸をしのぐ経済パフォーマンスを残し続けたことが、数字で測るだけでなく肌身に感じられる機会なのだ。

平和的な政権移行すらできない国の繁栄

 米国の物質的な成功はあらゆる分野で論じられている。ただ、その成功が政治の混乱のさなかに達成されてきたことは、十分に語られていない。

 ティー・パーティー(茶会党)、ドナルド・トランプ、外国での「永遠の戦争」、そして国内の文化戦争などに直面していた間にも、米国経済はうなりを上げながら成長していた。

 過去30年間における大統領弾劾の件数は、それ以前の200年間よりも多かった。

 21世紀に入る頃には国民の44%が連邦政府を信頼していたが、今ではその割合が16%にとどまる。

 前回の大統領選挙では(例えばセネガルのような国とは異なり)平和的な政権移行すら達成できなかった。

 また政治の劣化がきわめて深刻なため、分別のある人々が、いつの間にか最高裁判事の健康状態を気にするようになっている。

 現職の大統領と党派の異なる判事が亡くなれば後任の人選で党派間の激しい対立が始まると心配しているのだ。

 これほどまでに政治が混乱しているのに、経済への影響はほとんど見られない。一体どういうことなのか。