(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年5月8日付)

EVについては100%など、中国製品に対し高率の関税を課すことを発表したバイデン大統領(5月14日ホワイトハウスのローズガーデンで、写真:AP/アフロ)

 2期目に向けたドナルド・トランプの計画は、独裁者が抱く計画だ。

 前回の大統領選挙の結果を覆そうとしたことと、自分が勝ったという大きな嘘を無理やり共和党の大きな真実にしたことから、この願望はすでに明らかだった。

 さらに、最近のタイム誌の取材では、再選を果たしたら不法移民向けの巨大収容所を建設し、国内に米軍を配備し、自分の嫌いな人間を訴追するよう連邦検事に命じ、2020年1月6日の連邦議会襲撃事件にかかわった反乱者を恩赦し、政権全体を忠実な部下で埋め尽くすと語っている。

 また、北大西洋条約機構(NATO)の安全保障に疑問を投げかけ、それによって欧州を友人のウラジーミル・プーチンの危険にさらし、世界貿易戦争を仕かけるつもりでいる。

トランプ再選の脅威

 要約すると、世界における自由民主主義の旗手である米国でトランプが権力の座に返り咲けば、裁量的な専制政治がまたしても人間の統治の通常の形態になる瞬間となりかねない。

 この脅威のために、今から6カ月後の大統領選は米国の未来のみならず、世界全体の未来にとっても決定的に重要になる。

 ジョー・バイデンが語ったように、こうした問題はずっと政権の肩にかかる利害だった。

 ところが、どれほど重大であろうと、米国人は憲政問題をめぐって選挙の結果を決めない。米国人の優先事項は経済だ。

 これについては、バイデンにとってニュースは暗い。

 本紙フィナンシャル・タイムズ(FT)で先月報じられた世論調査によると、有権者の55%はバイデンの経済運営の実績に不満を抱いている。

 バイデンとトランプの支持率が依然これほど拮抗していることには、これである程度の説明がつく。