韓国銀行(中央銀行)は2024年5月23日、金融通貨委員会を開き、2024年の実質GDP(国内総生産)成長率の見通しを従来の2.1%から2.5%に引き上げた。輸出を中心に景気回復が鮮明になってきたが、政策金利は3.5%のまま凍結した。
韓国経済の2本柱は、輸出と半導体だ。この両軸が2022年後半から不振に陥って2023年の韓国の成長率は1.4%になり、25年ぶりに日本の成長率を下回ることになった。
今年になってこの2本柱の回復が目立ってきた。
25年ぶりの日韓逆転から回復
2024年に入ってからの輸出金額は対前年同月比で大幅に増加している。伸び率は1月18.2%、2月4.9%、3月3.1%、4月13.8%だ。
4月は輸出金額が多い15品目のうち、半導体、ディスプレー、自動車、石油製品、石油化学製品など13品目で輸出が増加した。
市況低迷に悩まされた半導体事業も急回復している。
2024年1~3月のサムスン電子の連結営業利益は前年同期比10.3倍の6兆6000億ウォン(1円=9ウォン)だった。SKハイニックスの営業利益は1兆9170億ウォンで黒字転換した。
2本柱が好転したことで、韓国銀行は先に1~3月の実質GDP成長率(速報値)が前期比1.3%だったと発表していた。四半期ベースでの成長率が1%を超えたのは2021年10月~12月期以来だった。
農水産物価格は10%上昇
こうした経済情勢を受けての韓国銀行の金融通貨委員会だったが、市場の大方の予想通り政策金利を3.5%で凍結した。
会議ベースでみると凍結は11回連続となった。
2024年の成長率見通しを上方修正したのにもかかわらず政策金利の凍結を決めたのは、経済の先行きに不透明な部分がまだ多いからだ。
韓国銀行が最も気にしているのは物価動向だ。
この日の会見で李昌鏞(イ・チャンヨン=1960年生)韓国銀行総裁は、「下期に利下げするという期待があるが、いつなのかという点については不確実性が大きくなった」と語った。
その理由を「物価の上昇圧力が強まった」と説明した。
韓国の消費者物価上昇率は4月に2.9%だった。2月、3月と2か月連続で3.1%だったが2%台になった。
だが、まだ目標である2%までは十分に下がっていない。
不安要因は少なくない。4月10日に投開票になった総選挙で与党が惨敗した理由の一つが「長ネギ」だった。
尹錫悦(ユン・ソンニョル=1960年生)大統領がスーパーを訪問した際、その店だけで超特価になっていた長ネギの価格を見て「合理的な価格だ」と言って庶民感覚とかけ離れているとの批判を浴びた。
野菜や果物の価格が大幅に上昇したことに一般国民が敏感になっていたのだ。問題の農水産物の価格は4月も10.6%と大幅に上昇した。
さらに、総選挙が終わっ後も電気料金、交通料金などの値上げが必至だ。
物価にも影響を与える為替レートも気になる。