「日本人は、どうして子どもを泣かせて楽しそうにしているのか」

 そんな彼らが着目したり、疑問に感じたりすることというのが、日本人の私にはたまらなく面白い。あるとき、知人の女性からこんな質問を受けた。

「日本人は、どうして小さな子どもを泣かせて、楽しそうにしてるんですか。子どもがかわいそうです」

 聞けば彼女は、秋田のナマハゲや、節分の豆撒きの様子を見たのだという。そこでは、いい年の大人が化け物に扮して子どもに襲いかかり、泣きじゃくる子どもを見て周りの大人たちが笑っているではないか。

イラン人が不思議に思う日本の風習も多い。なまはげもそのひとつ(写真:共同通信社)

「ま、まあ、かわいそうといえば、かわいそうだけどね。これはつまり、伝統っていうか…」

 一応、説明を試みるものの、私自身よくわかっていないので、うまく言葉にならない。

 あとから考えたのだが、この手の祭りは子どもを泣かせて楽しむためのものではもちろんなく、邪気を払い、不安を取り除くことが目的である。だとすれば、あの笑いは邪気が払われたことに対する、喜びの笑いなのではないか──。

 と、まあこんな具合に、イラン人からの予想外の質問がきっかけとなって、私自身が日本の文化を見つめ直すということが、この国で暮らしているとよくある。

 とくにイラン人を戸惑わせるのが、日本は世界に冠たるテクノロジーの国なのに、ときに日本人がひどく迷信じみた生活を送っているように見えることである。