ジブリをはじめ数々のアニメ作品を心待ちに

 たとえばイラン人は、イラン社会に向けて何かを訴えたいときには、決まって「日本人はこうしているが、われわれはどうか」という論法を使う。

 曰く、「日本人は教師を厚遇することで教育の質を保っているが、イラン人はどうか」「日本人は老いてなお生きがいをもっているが、イランの高齢者はどうか」、さらには「日本の側溝を流れる水は魚が棲めるほど澄んでいるが、イランの側溝はどうか」等々。

 これが、「米国人は…」「英国人は…」「中国人は…」では、誰も耳を貸さない。事実かどうかはさておき、何としてもここは「日本人は…」でなければならない。それくらいイラン人は、日本人をあらゆる意味で模範的な人々と考えている。

 最近は、インターネットを通じて多くの若いイラン人が、ほぼリアルタイムで日本のサブカルチャーに親しんでいる。

 とりわけ人気なのは、やはりアニメだ。

『千と千尋の神隠し』(宮﨑駿監督)や『君の名は。』(新海誠監督)のような、世界の映画史に残る名作はもちろん、『ナルト』『ワンピース』『呪術廻戦』『デスノート』『進撃の巨人』、そして『鬼滅の刃』など、テレビ放映される人気作品もすべて違法サイトから(!)無料でダウンロードすることが可能だ。イランの若者たちは日々、これらの最新作が公開されるのを今か今かと心待ちにしている。

 アニメを入口として日本に興味をもち、次第に日本語はもちろん、様々な伝統文化、習俗、自然、建築、美術などへ関心を広げていく人たちもたくさんいる。