受け入れへ課題は山積み
デジタルノマドを自国に呼び込み、経済発展や技術革新につなげようという動きは欧州から始まりました。IT大国として知られるエストニアは2020年7月、他国に先駆けて「デジタルノマド査証」を導入し、チェコ、ドイツ、スペイン、アイスランド、ポルトガルなどがこれに続きました。欧州以外でもアジアのインドネシアやタイ、中南米のコロンビアやアルゼンチンなどが競うようにこの制度を採り入れています。
韓国も今年1月からデジタルノマド査証を導入しました。年収要件は韓国の国民1人あたりの国民総所得である4248万ウォン(463万円)の2倍、8496万ウォン(926万円)以上に設定。期間は最長2年という内容です。日本はお隣の韓国に一歩遅れてデジタルノマドの誘致に乗り出すわけですが、どんな課題が残されているのでしょうか。
昨年10月、福岡市は自治体主導でデジタルノマドを実験的に招き、効果や課題を探る取り組みを行いました。参加したのは世界24カ国、およそ50人の人たち。彼らはホテルなどに滞在しながら福岡の街や食を楽しんだり、近くの観光地に足を延ばしたり。そして思い思いの時間にリモートワークをこなしました。
こうした実験や海外の実情などから、デジタルノマドの日本誘致には、さらなる環境整備が必要なことが見えています。安全で衛生的な滞在環境はもちろんのこと、リモートワークに必要なデジタル設備、安定した通信環境、時差を考慮した滞在施設なども欠かせません。英語が通じる環境も必要でしょうし、家族同伴の人たちも安心して暮らせるような子ども向けの施設も要望されるかもしれません。
長期滞在するといっても、デジタルノマドはやがて次の都市へ次の国へと移動していく存在です。そうした人々に対して、誰がどんな支援を差し伸べるのか。さらに、デジタルノマドの滞在中、日本の企業や技術をどうリンクさせていくのかも問われます。多くの課題も抱えたまま、日本はデジタルノマドの受け入れ元年を迎えます。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。
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