春の選抜大会の出場校が1月26日に決まる(写真:岡沢克郎/アフロ)

球春到来を告げる第96回選抜高校野球大会の出場校が1月26日に決まります。“春の甲子園大会”は1924年の誕生から100年。会場の甲子園球場も今年で開設100年という節目の大会です。出場校は前年秋の成績などを参考にして地区ごとに選ばれますが、これとは別の基準で選ばれるのが「21世紀枠」です。必ずしも実力最優先の選考ではないため、毎年のように「他校と実力が違い過ぎる」「導入から20年が過ぎ役割は終わった」といった声が聞かれるようになってきました。ファンの間でも賛否が分かれる21世紀枠について、やさしく解説します。

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春は招待制、実力以外の品位や地域性も基準

 甲子園を舞台とした春と夏の高校野球大会は、それぞれが100年の歴史を持ち、国民的行事としてすっかり定着しました。夏の大会は都道府県予選を勝ち抜いた代表校(北海道と東京は2校)が本大会に出場。地方大会・本大会ともトーナメント方式で戦い、「負けたら終わり」の一発勝負に臨みます。

  これとは別に、春の選抜大会は予選のない「招待制」として発展してきました。選ぶ側は大会を主催する日本高校野球連盟(高野連)と毎日新聞社です。選考基準になるのは、全国10ブロックごとに開かれる前年の秋季大会の成績です。この大会で優勝や準優勝などの好成績を収めると、かなりの確率で「一般選考」の結果として大会に選抜されることになります。

阪神甲子園球場=2013年撮影(写真:岡沢克郎/アフロ)

 選考に際しては「品位」「地域性」という基準も用いられています。そのため同じ県から2校が選出されることも珍しくありません。一方では、選出確実と思われていた学校が選外になるケースも時々起こり、物議を醸してきました。

 最近では、2022年の聖隷クリストファー高(静岡県)の例を記憶している人もいるでしょう。前年秋の東海大会で準優勝を果たした同校は「出場間違いなし」と言われながら落選。地元では納得できないという声が湧き上がり、関係者が出場を求めて1万人超の署名を集めるなどの動きも起きました。時折、こうした事態を引き起こしつつも、選抜大会の出場校は秋季大会の結果に基づきほぼ順当に選ばれてきました。

 ただ、近年では、出場校が私学の強豪に固定化する傾向が強まっています。有望な中学生を全国からスカウトすると同時に、充実した設備や科学的トレーニングなどを整える学校が常に全国大会に顔をそろえ、その他の学校はなかなかチャンスが巡ってこなくなったのです。

 このままでは、普通の高校生が全国大会に出られなくなる、甲子園出場という夢を部活動から奪ってしまう、教育の一環としての高校野球が失われていく――。そんな危機感を抱いた関係者によって21世紀枠は発案されました。そして21世紀に入った2001年の大会から「秋季大会の成績にとらわれない『清新の気風あふれたチーム』を選考する」というスタイルがスタートしたのです。