
写真提供:World History Archive/ニューズコム/共同通信イメージズ
「ものづくり大国」として生産方式に磨きをかけてきた結果、日本が苦手になってしまった「価値の創造」をどう強化していけばよいのか。本連載では、『国産ロケットの父 糸川英夫のイノベーション』の著者であり、故・糸川英夫博士から直に10年以上学んだ田中猪夫氏が、価値創造の仕組みと実践法について余すところなく解説する。
今回は、技術経営と創造性組織工学における価値創造のプロセスを比較する。
先進国向けの商品を新興国に投入する
今回はMOT(技術経営:Management of Technology)と創造性組織工学(Creative Organized Technology)の価値創造のプロセスを比較し、考察を深めてみる。
◯調査フェーズ
MOTにおける「研究」はシードの発掘から始まるが、ニードを重視する創造性組織工学の調査フェーズはインサイト(現在は表出されていない、隠れているマスクドニード)の発見から始まる。糸川英夫博士は発見方法として、次のような例を示している。
1. 商品弾性率のシフト
第6回で紹介した商品弾性率は、インサイトを発見するための一つの方法である。第13回で取り上げたトヨタ自動車でグローバルモデル「カムリ」のチーフエンジニア(CE)を務めた北川尚人氏がインドネシアで行ったフィールドワーク調査は、新興国において、第3商品群(比較的ぜいたく品)に該当する自動車のインサイトがあるかを探る調査と言える。
つまり、先進国向けの商品を、経済成長により所得が増加している新興国やBOP(Base〈or Bottom〉 Of the 〈economic〉 Pyramid)市場に展開(所得増加率をシフト)し、その国のインサイトを発見する方法だ。