世界に3500万人ほどいるとされる「デジタルノマド」(写真:Sven Hansche/Shutterstock.com

日本政府が「デジタルノマド」の受け入れに向け、最長6カ月の日本滞在を認める在留資格の創設に向けて動き始めました。デジタル技術と通信環境が整ったことから、近年はパソコン1つで国境にとらわれずに働く人が急増しています。新たな在留資格は、そうした優秀な人材を日本に呼び込み、日本経済と企業活動に刺激を与える狙いがあります。遊牧民(ノマド)に引っ掛けた「デジタルノマド」。それはどんな存在なのでしょうか。やさしく解説します。

フロントラインプレス

対象は年収1000万円以上、23年度中に制度化

 小泉龍司・法務大臣がデジタルノマドの呼び込みに言及したのは、2月2日の閣議後会見のことです。デジタルノマドは世界に約3500万人いるとの推計に触れた後、小泉大臣は次のように語りました。

「(デジタルノマドは)国際的なリモートワーカー。いろいろなイノベーションを創りだす源になる能力、力を持っているということで、各国が(彼らを)取り込もうとする動きも見られています。わが国でも同じように、一定の条件を示して日本に入ってきてもらい、滞在してもらい、日本の様々な活動とクロスしてもらう。そういう観点から新たな在留制度を創設することを考えております」

 政府は本年度中にも制度をスタートさせる予定で、すでに出入国在留管理庁がパブリックコメントの募集を始めています。デジタルノマドはスポーツ選手などと同様、法務大臣が指定する「特定活動」の範囲に含めるよう法令を改正する予定です。ビザなしで往来できる49カ国・地域の国籍を持っていることが条件で、デジタル技術を使う仕事により1000万円以上の年収がある人が対象。民間の医療保険加入も必須とする一方、配偶者や子どもを伴う滞在も可能としています。

 岸田内閣は2023年6月に打ち出した看板政策「新しい資本主義」実行計画(改訂版)の中で、「国際的なリモートワーカー(いわゆる「デジタルノマド」)の呼び込みに向け、ビザ(査証)・在留資格など制度面も含めた課題についての把握・検討を行い、本年度中の制度化を行う」と宣言していました。その実現に向けて踏み出すことになります。

 デジタル技術の発展に加え、各国がコロナ禍に見舞われたことで働き方に関する考え方は大きく変化しました。「ワーク(work、働く)」と「バケーション(vacation、休暇)を組み合わせた「ワーケーション」もその1つ。都会の事業所を離れ、リゾートや観光地で働きながら余暇も同時に楽しもうというライフスタイルです。デジタルノマドはそれをさらに進化させたもので、「働いて資金を貯め、住宅を購入し、自分の人生をその土地で築いていく」という従来の人生設計そのものを転換させるスタイルかもしれません。