スマホ依存とギャンブルの類似性

「ある音が聞こえたらジュースがもらえる」というマウスの実験があります。マウスのドーパミンレベルは、実はジュースをもらって飲んでいる時ではなく、音を聞いた時に上昇します。さらに、音が聞こえてもジュースが「時々しかもらえない」方が、ドーパミンの量が増えました。

 脳はこの「恐らくもらえるだろう」という状況が好きで、だから「当たるかもしれない、当たる可能性がある」と期待するギャンブルを好みます。しかし、この「もしかしたら〜かもしれない」という不確かな結果への偏愛は、デジタル社会ではネガティブな影響をもたらします。

 例えばSNSに写真を投稿したら、友だちが「いいね」を押してくれているか、何か更新がないか、スマホを手に取って確かめたいという衝動をよりかき立てます。「いいね」が増えたかもしれないから見てみようと思うのは「ポーカーをもう1ゲームだけ、次こそ勝てるはず」というのと同じメカニズムなんです。

 スウェーデンだけではなく全世界で、精神的な不調を訴える人は増えています。とりわけ若者に顕著です。WHO(世界保健機関)は、生まれてから最初の数年で脳が大きく発達するので、5歳以下の子供はデジタル・デバイスの使用に注意すべきだと警告しています。

 スウェーデンでは、この20年で睡眠障害の若者が11倍に増加しました。ある調査によると若者の約3分の1が、スマホをベッドの中に入れて寝ています。(サイドテーブルに置くのではなく!)生まれてからずっとスマホが手元にあるような子供や若者への長期的な影響には特に注意し、心身へのリスクを回避する必要があります。

 人間の精神や脳がどう機能しているか。スマホが人間の脳にどう影響するのか。心理的にいかにスマホに取り込まれていくか。デジタルテクノロジーの素晴らしさとともに、その強い副作用についてももっと議論し、理解すべきです。そして、人間の生物性や精神性に適した、依存性の低い技術があればそれを選択していくべきです。

ハンセン氏のインタビューはこちらをご覧ください

──IT企業のトップやスマホやアプリなどの開発者は、人間が快感や刺激に弱いとよく認識していて、スマホに依存するような仕組みを作っている。その一方で、自分たちが生み出したテクノロジーに恐怖を感じ、罪悪感を持っていると本書に書かれています。