自分の子供にiPadの使用を制限したジョブズ

ハンセン:IT企業の開発者は、私たちの関心や注目をいかに引きつけるか、心理学や脳科学を応用して、私たちの脆弱な精神に訴える様々な仕組みを生み出しています。

 衝撃的なのは、これらの商品を提供しているIT企業の幹部たちが自分たちは非常に注意深く、スマホやタブレット端末を使用しているということです。自分の子供にはスマホを与えていません。

 アップルの創業者スティーブ・ジョブズは世の中にiPadの素晴らしさを説きましたが、自分の子供にはiPadに触る時間を厳しく制限し、しかもそのことを黙っていました。マイクロソフト社のビル・ゲイツも、自分の子どもが14歳になるまでスマホを持たせませんでした。アップル社のCEOティム・クックは、「もしあなたが人の目よりスマホを見ている時間が長いなら、それは間違ったことだ」と発言しました。つまりアップル社の製品を使い過ぎるな、と言っているんです。

「いいね」ボタンを開発したジャスティン・ローゼンスタインは、ヘロインに匹敵する依存性があるとして自分のスマホに使用を制限するアプリをインストールしたと明かしています。そして、後悔したようにこう言っています。「製品を作る時には最善を尽くしたが、その思ってもみなかったような悪影響に気づいたのは後になってからだ」と。

 テクノロジーに精通している人ほど、そのネガティブな影響を知っています。なんという偽善でしょうか。シリコンバレーのエリートたちは毎学期2万ドル、3万ドルもの学費をかけて、スマホを遠ざけてくれる学校に自分の子どもたちを通わせているのですから。

──学校ではタブレット端末の導入など教育のデジタル化が進められています。しかし、学習効果を見ると、手書きの方が記憶しやすく、スマホやタブレット端末はインターネットと繋がっているので勉強に集中しきれないという調査結果を本書で紹介されています。