「スマホ脳」から脱却するメタ認知のススメ

──精神科医として、患者が自分の感情を理解して言語化し、苦しみを言葉にできれば対策が立てられ、治療に繋がると本書で述べられています。スマホやSNSによるストレスを言葉にできれば、スマホに翻弄されないということでしょうか。

ベストセラーになっている『スマホ脳』

ハンセン:不安やうつの症状は、必ずしも病気というわけではなく、人間として正常な反応です。人間が生存し、繁殖するためには、周囲に注意を払い警戒し、事故など悪い出来事が起こるかもしれないと恐れることは非常に重要なことです。時には頭からブランケットを被って隠れることも、生き抜くためには必要です。

 メンタルヘルスの治療のゴールは、患者に自分の精神を舞台に上げて、自分で客席から見てもらうことです。自分の感情を一歩下がって客観視し、自分の思考を観察するのです。言葉にしてストレスの理由を見極めて距離をとること、これを「メタ認知」と言います。これは非常に意味のあることなので、ぜひやってみてください。この「メタ認知」を今のデジタル社会に援用すると、一歩下がって「だから私は今スマホを手に取るのだ」と理解することができる。無意識にスマホを弄ってしまうのではなく、自分のドーパミンシステムがスマホに乗っ取られていると自覚することができます。(構成:添田愛沙)