私たちの暮らしに不可欠な存在になっているスマートフォン。スマホで何かを見たり聞いたり調べたりするのはもはや日常で、身体の一部と言っても過言ではない。だが、このスマホを軸にしたオンライン習慣は人間の脳にどのような影響を与えるのだろうか。「脳トレ」で名高い東北大学加齢医学研究所「川島研究室」の榊浩平助教が導き出した衝撃の結論──。
(*)本稿は『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)の一部を抜粋・再編集したものです。
(榊 浩平:東北大学加齢医学研究所助教)
みなさんは、どのようなデジタル機器を使ってインターネットに接続していますか?
総務省の「令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」から、インターネット接続に使用するデジタル機器の内訳を見てみると、平日1日あたりの使用時間について、スマホなどのモバイル端末が110.0分で最も長く、パソコンが57.6分、タブレット端末が12.4分、テレビが10.6分と続きます。やはり、肌身離さず持ち歩くことのできる、スマホが最もよく利用されているようです。
スマホは他のデジタル機器と比べて、どのような特徴があるでしょうか?
一つは、たくさんの機能がつまっているということです。スマホは「Smartphone」という名前の通り、本来の役割は電話です。しかし、実際にはもはやパソコンに近い機能を持っています。
もう一つは、小さくて軽いということです。スマホはパソコンやタブレットなどの他のデジタル機器と比べて、圧倒的に小さくて軽いため、いつでもどこでも手軽に持ち運ぶことができます。このような優れた利便性と携帯性から、スマホはすでに私たちの生活の中に深く溶け込んでしまっています。
急速に進行するスマホ社会は、脳にどのような影響を与えているのでしょうか。私たち東北大学加齢医学研究所では、子どもたちを対象に脳の発達に対する影響を15年以上にわたって研究してきました。
子どもを対象にする理由はいくつかありますが、その一つに、子どもの脳は急激な発達の過程にあるためスマホの影響が表れやすいという点があります。ここでは、これまでの調査や実験の結果から明らかとなったスマホが脳に与える影響について見ていきます。