私たちの暮らしに不可欠な存在になっているスマートフォン。スマホで何かを見たり聞いたり調べたりするのはもはや日常で、身体の一部と言っても過言ではない。だが、このスマホを軸にしたオンライン習慣は人間の脳にどのような影響を与えるのだろうか。「脳トレ」で名高い東北大学加齢医学研究所「川島研究室」の榊浩平助教が導き出した衝撃の結論──。
(*)本稿は『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)の一部を抜粋・再編集したものです。
(榊 浩平:東北大学加齢医学研究所助教)
みなさんは、1日にどのくらいインターネットを使用していますか?
総務省の「令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」の結果によると、2021年時点で平日のインターネットの使用時間は全年代(調査対象:13~69歳)を平均して、176.8分間と報告されています。
過去の統計を見てみると、2013年で77.9分となっています。10年も経たない間に、インターネットの使用時間が2倍以上に増えています。
年ごとに使用時間が増える幅を見てみると、2020年の調査で大幅に使用時間が長くなっていました。やはり、この年の春に始まった新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響でステイホームの時間が長くなり、インターネットの使用時間も延びてしまったのでしょう。
年代別に見てみると、最も長いのが20代で275.0分で、年代が上がるごとに使用時間は短くなり、最も短いのが60代で107.4分でした。
使い方の内訳(全年代平均)を見てみましょう。
「動画投稿・共有サービスを見る」が最も長く、43.3分でした。動画投稿・共有サービスとは、YouTubeやTicTokのような、自分で作った動画を公開して配信することができるサービスを指します。
動画の視聴に続いて、「ソーシャルメディアを見る・書く」が40.2分、「メールを読む・書く」が35.7分、「ブログやウェブサイトを見る・書く」が26.0分、「オンラインゲーム・ソーシャルゲームをする」が20.3分、「VODを見る」が14.1分、「ネット通話を使う」が4.2分となっています。
VOD(Video On Demand)とは、NetflixやAmazon Prime Videoのような、映画やテレビドラマなどをインターネットで配信するサービスを指します。レンタルビデオのオンライン版のようなイメージです。
YouTubeなどの動画投稿・共有サービスとの違いは、「一方向型」か「双方向型」かという点です。一方向型とは、視聴者が見るだけのテレビやビデオ(DVD、ブルーレイなど)がその典型です。インターネットを介してはいるものの、ビデオと基本的な性質は変わらないVODも、一方向型のメディアと言えます。
一方で、動画投稿・共有サービスは性質が異なります。
視聴者が動画にコメントや評価をつけたり、中には配信者がリアルタイムで動画を配信しながら視聴者とコメントで会話する「生配信」をできたりといったシステムがあります。このように、動画を配信する側の人と、視聴する側の人がつながることができるため、双方向型のメディアといえます。
このように、インターネットを日常的に使用するオンライン習慣は、着実に私たちの生活の一部となってきました。