スマホの負の影響に飲み込まれない方法

ハンセン:睡眠や運動、人と会うことはもっとも重要なことです。だから、寝なくなり、運動しなくなり、実際に人と対面する機会も減ると、不安やうつになりやすくなります。大事なことは「スマホで何をするのか」ではなく、「スマホを使うことによって何をしなくなるのか」なのです。

 SNS上で自分と他人を比較することが大きなストレスになります。これはとくに思春期の女性に強い影響があります(男子はSNS利用よりゲームに費やす時間が長いので影響が少ない)。

 SNSには他人と自分を比べる構造的な性質があるので、全世界的にメンタルヘルスを脅かす問題があります。自分がヒエラルキーのどこに位置しているのかという認識は、私たちの精神の健康に大きく関係します。ヒエラルキーの中で下降していると感じると、みんなより自分がだめだと思って不安感やうつ症状が増します。

 人間は150人くらいのコミュニティの中の、さらに20~30人との比較の中で生きてきました。しかし、SNSによってヒエラルキーの形成や認識をする対象の人数が激増し、他人の体型や成功、お金、持ち物すべてがあなたを脅かすようになりました。

 本当は、それは人生そのものではなく、見かけの一面に過ぎないのですが、それは10代や20代の若い人にはわからないかもしれない。みんなが自分より賢く、美しく、成功しているように感じてしまう。1日に4~6時間もスマホに触れることによって、若者の不安とうつのリスクはより高まっています。

スマホ依存を描いたバンクシーの作品(写真:Press Association/アフロ)

──スマホの負の影響についてよく分かりました。しかし、友人や家族とのやり取り、ニュース、情報検索、ネットショッピング、娯楽すべてがスマホの中にあり、なかなか遠ざけることができません。

ハンセン:私自身もスマホなしでは生活できませんが、よく眠り、集中力を高めて、元気に過ごしたい人は、例えば次のようなことをやってみてください。

・自分のスマホの利用時間を把握する
・集中したい時は別の部屋に置く
・人と会っている時はスマホを遠ざけて目の前の相手に集中する
・学習能力が低下するので教室では使わない
・寝る時には電源を切る
・SNSでは積極的に交流したい人だけフォローする