「劇薬だ」「スポンサーから不信感」との指摘も

 プライムタイムの番組は通常1時間単位ですが、番組が終了してから、次の番組の開始までに、比較的長い時間のCMが流れます。放送業界用語で「またぎ」と呼ばれる、正時をまたぐ「CMの塊」で視聴率が急落します。A氏が言っているのは、午後8時などの正時をまたぐのを避けることが重要だということです。

 つまり、他局が通常編成であれば、正時をまたぐ時に「CMの塊」があるので、対抗措置としてスペシャル番組で、他局の「またぎ」の時間帯にCMゾーンを置かずに視聴者を呼び込む戦略です。

特番のメリットの一つとして、他局がCMを流している時間に視聴者を呼び込めることがあるようだが(写真:r.classen/Shutterstock.com

 確かに、視聴率競争で有効な手法なのだろうと思います。しかし、後輩の営業経験者B氏は、この手法について視聴率向上の成果を認めつつも、「劇薬だ」と指摘し、「スポンサーから不信を招いている側面がある」と言います。

 スポンサーは○曜日○時の「△△△」という番組を買ったのに、週ごとに放送したり、しなかったりというのでは不満が生まれます。特番が頻発すると、買った番組ではない別の番組にCMを提供することもあり得るため、「スポンサーのストレスが大きくなる」と、B氏は「劇薬」の「副作用」を憂えていました。

 視聴者の立場からすれば、レギュラーだろうがスペシャルだろうが形式に関係なく、番組が面白ければよいということに尽きます。各局が「またぎ対策」でスペシャル番組が増えていけば、結局は中身の勝負になります。

「タレントが旅館行って飯食うだけ」

 そういう中で、私は各局が番組制作費を削減していることが気がかりです。当コラム「『リアルタイムで見るのはスポーツだけに』テレビマンの焦りが現実になる日」で指摘したように、番組制作費の削減が番組クオリティーの低下を招き、それが視聴率の低下、放送収入の低下につながり、そしてさらなる制作費の削減という下向きのスパイラルにはまりつつあるのではないかと危惧しています。

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テレビは2~3人のタレントがどっかの旅館行って飯食って帰ってくるだけだもんね。

 2023年11月、ABEMAの番組でビートたけしさんが、番組制作費の削減により、安易で平板な番組が多くなっているテレビ業界の現状を嘆いた発言です。