東京でもクマの目撃情報が相次いでいる(写真はイメージ)

 全国で「クマ騒動」が続いている。東北、北海道を中心にクマによる人身被害が多発、環境省によると10月末までに164件、被害者は180人となり、統計を取り始めた2006年度以降最悪となっている。そんななか、意外なことに東京都内でもクマの目撃情報が相次いでいる。昨年は年間で194件の目撃情報などがあった。東京のクマの生態はどうなっているのだろうか。

東京は世界でもまれな「クマが生息している首都」

 人口約1400万人の東京。超高層ビルが林立する大都会のイメージだが、実はもう一つの顔がある。

 東京都の総面積2194km2のうち、36%は森林なのである。奥多摩や裏高尾といったエリアには豊かな森が形成され、多くの野生生物が生息している。人気スポットの高尾山一帯は多様で多彩な生態系が保持され、約30種類もの哺乳類の生息が確認されている。イノシシ、タヌキ、ニホンザル、ニホンアナグマ、アカネズミ、ニホンテン、ムササビなどである。

 そして驚愕の事実が東京都のホームページに掲載されている。

〈東京は世界的にも珍しい「クマが生息している首都」です〉

 ツキノワグマの都内における生息地域は、都の西に位置する多摩地域(奥多摩町、檜原村、あきる野市、青梅市、八王子市、日の出町)の森林である。10月には町田市での目撃例が報告されているが、地理的には八王子市にごく近い山林で多摩地域に準ずるものと思われる。

 2017年度から2020年度にかけての都の生息状況調査によると、カメラトラップ法(赤外線センサーなどを用いて野生動物の接近や通過を感知し、自動撮影する手法)では推定生息数102頭(72─123頭)、ヘアトラップ法(有刺鉄線を囲ったわなにクマの体毛を引っかけて回収し、体毛のDNAを分析して個体数を推測する調査法)での推定生息数は平均161頭(128─181頭)となっている。