プログラミングに生成AIを活用する動きは始まっているが……(Jakub Porzycki/NurPhoto/共同通信イメージズ)
  • IT人材の育成やレガシーシステムの刷新が急務となっている日本だが、ここに来て、生成AIにプログラミングを任せようとする施策が注目を集めている。
  • 現に、社内システムのプログラム開発で業務効率が70%向上した事例、生成AIの活用でコーディング作業が2倍の早さで完了できる可能性があるとしたレポートも出ている。
  • 一方で、スピードは速いものの、作業品質には問題があり、それがセキュリティーリスクにつながる恐れもある。生成AIの活用が不可欠だということを考えれば、活用する人間のマネジメント力が問われる。

(小林 啓倫:経営コンサルタント)

IT人材不足解決の切り札として期待される生成AI

 少し古い調査になるが、2016年に経済産業省が発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査」によれば、日本のIT人材は2030年に最大で約79万人不足すると予測されている。

【参考情報】
IT人材の最新動向と将来推計に関する調査(経済産業省)

 ご存知の通り、日本は超高齢化社会を迎え、労働人口(特に若年人口)が産業界全体で不足している。一方で世界は急速にデジタル化しており、日本が競争力を維持するためには、さまざまなITシステムの開発をこれまで以上に進める必要がある。その結果、IT人材の需要と供給の差が生まれてしまうわけだ。

 この構造的な問題は現在も変わらず、「79万人の不足」という予測は各所で引用される数字となっている。

 また最近では、「2025年の崖」という言葉も生まれている。これは過去に開発され、老朽化したITシステム(レガシーシステムと呼ばれる)の刷新がIT人材の不足で進まないことで、2025年以降にシステム障害の発生数が3倍になり、最大で年間12兆円もの損失が発生するという経済産業省の予測を指している。

 単にITシステムの開発が進まない、つまり企業の競争力が向上するというプラスが生まれないだけでなく、古いシステムが問題を引き起こすというマイナスが生まれる事態に直面しているのだ。

レガシーシステムを巡る企業の状況。2022年1月時点の図版(写真:共同通信社)

 こうした背景から、日本政府は技術者の育成に力を入れているが、そもそも若者の数が減少している日本では、残念ながら短期間で技術者を大幅に増やすことは難しい。そこで注目されている施策のひとつが、AIにプログラミングを任せようというものだ。

 最近注目される生成AIは、文章や画像だけでなく、プログラムのコードまで生成できるものが多い。

 たとえば、お馴染みChatGPTに「日付から曜日を割り出すプログラムを開発し、そのプログラムを使って、2024年1月1日が何曜日か確認して下さい」と指示すると、プログラミング言語のひとつ、Python(パイソン)を使って次ページにあるようなコードを書いてくれる。