「カルト」は隣近所にも

 コーチングの内容は奇怪で、人々は早朝から夜遅くまでパソコンの前に座らされ、創設者の言葉を一字一句書き起こすよう指示もされた。また、これまでの人生の経緯を事細かに語らされ、その様子は録音もされていたという。脱会しようと試みた人たちに対して、こうした「コーチング」で語った人生のトラウマなどを公表するなどと脅したという。

 これも他の商法に通じるが、こうした「コーチング」の中で、団体は参加者を家族や友人らから遠ざける手段も講じている。スピリチュアルな段階を上るのに、周囲は最も大きな障害だと説得するのだという。このあたりはある種の「マインドコントロール」とも呼べるだろう。

 同番組によれば、英国には「ライフコーチング」に携わる人が現在8万〜10万人に上るという。また、心理療法などと異なり、ライフコーチングに関しては厳格な規制がなく、資格がなくても誰でもライフコーチを名乗れると指摘している。

 番組にはカルトに詳しい専門家も出演しているが、取材に応じた専門家の多数が同団体を「カルト」として位置付けたという。特筆すべきは「カルト」とはそろいの衣装をまとった集団のみならず、隣近所のどこにでもいるものだ、という発言だろう。

 この団体は番組放送直前の今年3月、「公共の利益に反する」とする政府命令によって閉鎖されている*4

*4Mentoring and coaching company shut down for financial irregularities(4月6日付、英国政府)

 政府の広報資料によれば、2012年に設立された同団体は、2014〜22年に顧客から240万ポンドの収入を得ていた。そして、少なくともその半分が創設者に流れ込んでいたと指摘。政府の調査官は高裁で、この団体が実際には何をしていたのかが全くわからない、と証言した。