メディアは苦しむ人たちに信頼されてきたか

 BBCの調査報道は2021年11月、被害に遭った男性の恋人が同放送局に団体についての懸念を連絡したのが取材開始のきっかけだ。一方、旧統一教会問題では、宗教2世たちが直面してきた苦難は安倍氏銃撃まであまり注目されてこなかった。宗教2世たちはそれまで、主要メディアを通じて声をあげることができなかったのだろうか。彼ら・彼女らが救いを求められるほど、主要メディアが信頼されていなかったということか。それとも、声をあげていたのに、これまで大きく取り上げられることがなかったのか。

 英国の事例で情報提供を行った女性は、藁(わら)にもすがる思いだっただろう。BBCはこの番組制作でその悲痛な思いに向き合い、メディアとしての役割を果たしたと言える。

 旧統一教会が関わる問題の追求のみならず、メディア各社にはジャニーズ問題に加え、この件においても自社の取材姿勢をもう一度問い直す大きな機会かもしれない。報道の役割は本来こうした問題を徹底追及し、被害をできるだけ少なくすることにもある。

 無論、こうした団体の告発は時に危険が伴うこともある。しかし現在行われている、各社によるジャニーズに浴びせられている猛烈な一斉集中砲火が旧統一教会に対してももっと早く行われていれば、被害の拡大を未然に防げたのではないかと、無念な思いが募る。