熱狂的で一体感のある応援に定評のある浦和レッズ(写真:アフロ)
  • 日本サッカー協会は9月19日、浦和レッズに対して2024年度の天皇杯への参加資格を剥奪する処分を科した。
  • 8月の天皇杯で浦和レッズの「サポーター」と自称する観戦客ら70人以上が暴徒化し、警備員への暴行やスタジアム設備の破壊行為をしたことに対し、断固たる処置をとった。
  • 英国などで大暴れし、人命さえも奪っている「フーリガン」のまね事は愚かな行為だ。「おもてなし」をはじめとする日本流の応援にもっと誇りを持つべきだ。

(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

 今年8月、プロ・アマを問わずサッカーの日本一を決める天皇杯の4回戦で、サポーターを自称する一部暴徒による日本のサッカー史上前代未聞の暴力事件が起きた。対戦したのは名古屋グランパスと浦和レッズ。3対0で名古屋が勝利したこの試合後、浦和側より100人程度の暴徒がピッチ上などに流れ込み、警備員への暴行や柵を壊すなどの暴力行為や名古屋サポーターへの威嚇行為などを働き、愛知県警が出動するまでの大騒動となった。

 当初、レッズは会見で暴力行為の存在を否定していたが、暴行の現場を捉えた映像が日本サッカー協会によって確認されたこともあり、試合から2週間後に一転してその存在を認めた。SNSでは子供が恐怖におびえ、泣いていた、という投稿もあった

 問題を起こした浦和レッズサポーターと自称する暴徒らの行為により、浦和は来年度の天皇杯出場権を剥奪された。9月21日には日本サッカー協会、Jリーグ並びにリーグの全60クラブが「二度とこのような行為が起こらないよう断固とした姿勢で取り組んでいく覚悟です」と異例の共同声明を発表した*1

*1日本サッカー協会(JFA)、Jリーグ、Jリーグ全60クラブ共同メッセージ(9月21日付)、JFAによる発表(9月19日付)

 70人を上回る暴徒らには、無制限入場禁止などの処分が下されている。この件に関しては一部で浦和側が名古屋サポーターから「挑発された」という証言もあるようだ。だが、浦和はしばしば一部の過激派による問題行動により、2000年以降11回もの懲罰を受けてもいる。

 ちなみに、筆者は今回暴力行為を起こした暴徒を「サポーター」とは呼ばない。これら暴徒はしばしば試合も見ずに自分たちが騒ぎ立てるだけだとも言われている。筆者が個人的にSNSでつながっている浦和のサポーターには、誰よりも選手やクラブに迷惑のかかるこのような愚行を心底嫌悪している人もいる。

 一昨年、筆者がサポーターである大分トリニータと天皇杯の決勝で当たったレッズサポーターの知り合いは大分の敗戦後、人口比率で圧倒的に少ない大分サポーターが国立競技場に多数九州などから駆けつけ、大分側を見事に青と黄色で染めた画像を黙って送ってくれた。浦和「サポーター」には、こうしたリスペクトの塊のような人も存在する。

 英国在住の筆者は最近、こうした過激な行動に走る一部の暴徒や、選手らに浴びせられる悪質な罵詈雑言やヤジ、暴言など、不穏な動きに対してある懸念を抱いていた。そこへ9月16日、香港の日刊英字紙サウス・チャイナモーニングポストに、その懸念を反映するかのような記事掲載があった。「日本のサッカーにイングランドスタイルのフーリガニズム、ワールドカップでのゴミ拾いとは対照的」というものだ*2

*2Japanese football faces English-style hooliganism issue as violence contrasts with World Cup litter pickers(9月16日付、香港サウス・チャイナモーニングポスト)

 だが筆者が懸念していたのは、日本にもイングランド流のフーリガニズム到来、という点ではない。記事にも記されている通り、1970〜80年代の最もひどい時代には死傷者も出しているイングランドのフーリガニズムが、浦和やその他の数例だけで、日本にも浸透しているとは考えづらい。

 最悪の時期とは状況が異なるとはいえ、イングランドはコロナ禍以降の現在も、いまだにサッカーの試合に特化した警察部隊が暴力行為に対応している。昨年秋にはサッカー観戦者法にコカインなど薬物の所持も犯罪行為として加えられ、警察は新たな脅威とも対峙している。9月28日に発表されたイングランドとウェールズにおける2022-23シーズンのサッカー関連の逮捕件数は2364件で、うち200件がコカインやヘロインなどを含む「クラスA」に類される薬物の所持に関する物であった。