- 女子サッカーが大盛り上がりを見せる英国で、女子サッカー選手への「ヘイト」が過激化するなど、SNSにおける誹謗中傷が大きな社会問題となっている。日本の「なでしこ」は大丈夫か?
- 日本では代表選手やJリーガーなどへの攻撃も続く中、J2町田ゼルビア所属のポープ・ウィリアム選手への誹謗中傷を巡るやりとりが注目を集めた。
- 英国ではX(旧ツイッター)などSNSの有害コンテンツを規制する「オンライン安全法案」が議会を通過し、間もなく施行される。プラットフォームを運用するテック大手の責任がより問われることになる。
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
【後編】気まぐれマスク氏のX「ブロック廃止」はアリ?ryuchellさんが問いかけたもの
なでしこジャパンのエースとしても活躍した、女子サッカー元日本代表の岩渕真奈さんが現役引退を発表してから3週間あまり。引退後の去就に注目も集まる中、9月12日に開催された日本男子代表対トルコの国際親善試合にゲスト出演した。
当日はX(旧ツイッター)に「初めての解説 半端じゃなく難しくて90分試合するよりも疲れました…笑」と投稿している。
引退発表後のインタビューでは、解説者の道を進むのは自身には向かず「難しいかな」と語っている。今後、障がい者スポーツに関わる可能性のような発言もしており、新しい活躍に期待したい。
その岩渕さんがかつてプレーしたイングランドで、まさに引退後解説者となった元女子選手が、SNS上で「(女は)台所に帰れ」などという卑劣な誹謗中傷にさらされている。
英国では女子サッカー人気が急上昇
イングランドでは近年、特に女子代表が2022年に欧州選手権で初優勝を果たして以来、女子サッカーへの人気が急上昇している。因縁のドイツと対戦した去年の欧州選手権決勝は自国開催でもあり注目度も高く、観客動員数は8万7000人を超えて欧州サッカー連盟(UEFA)が主催した大会としては男女を通じて史上最多となった。
筆者は、岩渕さんがイングランドのアーセナル・ウィメンに在籍していた2年ほど前、数回ホーム試合を現地観戦したことがある。「アーセナル」と聞けばサッカーをよく知らない人でも、男子ではプレミアリーグの強豪クラブの1つというイメージはなんとなく思い浮かぶのではないだろうか。現在、日本代表のDF・冨安健洋選手がプレミアのアーセナルに所属している。
実際女子の試合を観に行くと、本拠地は男子が使用するエミレーツスタジアム(収容人数6万人以上)ではなかった。ロンドン中央部から電車とバスを乗り継いで1時間半ほどかかる競技場で、収容人数はエミレーツの10分の1以下の5000人ほどだった。
試合後に岩渕さんをはじめ選手らがピッチ上から、客席との壁越しにファン・サポーターとの写真撮影やサインに長い時間をかけて応じていたのにも驚いた。プレミアリーグに比べアーセナル・ウィメンの試合では選手とファンの距離が格段に近く、間に物々しい警備もなかった。この距離感は、本来あるべきスポーツの姿ではないかと、すがすがしくも感じた。
今年のワールドカップ(W杯)でも、イングランドはスペイン相手に惜敗したものの、決勝進出を果たした。アーセナル・ウィメンはこの春、エミレーツで開催された試合が売り切れになるなど、今後は全試合の同スタジアム開催も期待されている。
筆者が数年前にリーグ戦で体感したほのぼのと温かいサポーターとの交流も一変してしまうのではないかーー。そんな不安すらよぎるほどに、イングランドにおける女子サッカー人気は近年過熱ぎみだ。